プロジェクターで化粧品をお試し コーセーと東京エレクトロンデバイス
人間の顔を自動認識し、画像を投影して複合現実(MR)によるメイクアップのシミュレーションを行うサービスが、米ラスベガスの家電・IT展示会「CES 2025」に登場し、世界から集まった参加者の好評を得た。化粧品のコーセーが、エレクトロニクス商社でメーカーとしての機能も持つ東京エレクトロンデバイス(TED)製のプロジェクターを用い実現した。 【関連写真】角度や表情を変えてもメイクが落ちない 店舗を訪れた顧客が納得ゆくまでシミュレーションを利用したうえで化粧品を購入する、といった使い方ができる。投影する画像は一瞬で切り替えられるほか、顔の向きを変えても自然に追従するため、本物のメイクアップのようにさまざまな角度から眺められる。ナチュラルメイクのほか歌舞伎のような派手なメイクも気軽に試せる。 これを可能にしたのが1秒間に1000枚の画像を投影できるTED製プロジェクター。大量に並べた微小な鏡を制御しさまざまな映像を投影するという、米半導体大手テキサス・インスツルメンツ(TI)が開発したデジタル光処理(DLP)方式の部品を搭載するほか、独自通信インタフェースで画像を高速転送する回路を計算機に組み込み、画像の生成から投影までに生じる遅延を短く抑えられる。東京大学石川グループ研究室との共同開発の成果をもとに製品化したものだ。 CESに参加したTEDの徳重敦之代表取締役社長最高経営責任者(CEO)は現地で会見に応じ、同プロジェクターについて「初めはどういったアプリケーション(用途)に使えるのか本当に試行錯誤していた」が、コーセーから話があってサービスの実現にいたったと明かした。 コーセーは23年にもCESにサービスを単独出展し人気を博したが、今回はTEDと共同出展し、商談も進めて事業化につなげる考え。日本国内では東京・銀座の直営店舗で22年から試験導入しているが、25年中には外部の流通事業者への提供もめざす。国外では米ロサンゼルスにある直営店舗で25年中に導入予定で、26年以降の外部提供も視野に入れる。北米以外ではアジアへの展開も有望とみる。 TEDはリップなどの赤色をよりよく表現できる改良型プロジェクターを開発中。早ければ2025年中の投入を見込む。さらにCESで得た反応も「製品開発に生かしてゆきたい」(徳重社長)との考え。用途の広がりにも期待しており、徳重社長は「エンターテインメントやスポーツなどは可能性があるのではないか」との見識も示した。CESでは化粧品にとどまらない分野の企業から来訪があったという。
電波新聞社