東京メトロはしょぼい?「新NISA民」をターゲットに再び新設&拡充が進む株主優待
■ 東証改革で株主優待廃止の流れもあったが… 株主優待を提供する企業は、単元株(100株)以上の株主を対象としているところが多いが、東京メトロは2単元(200株)以上が条件だ。まずは、これが「せこい」という。 日本マクドナルドホールディングス、オリエンタルランドなど30以上の優待銘柄に投資する40代の女性の感想は、「ひと言で言えば、しょぼい」だった。 「関連施設と言ってもよく知らないところばかりで、『誰が使うの?』という感じ。東京メトロファンや営業圏外の株主に配慮したグッズなどを入れてほしかった」 “乗り鉄”で首都圏の鉄道関連銘柄を網羅する50代の男性も「鉄道会社あるあるというか、こんなものでしょ。東京メトロだし」と冷ややかだ。 優待族が相対的に東京メトロの優待内容に辛口なのは、別の理由もあるように思う。 以前の記事(「ビットコイン付与など株主優待に変化、個人の投資戦略にどんな影響があるか」)で、2022年4月の東京証券取引所の市場再編を機に上場企業の優待制度のあり方が変わってきたと指摘した。 海外を中心とする機関投資家には、優待で自社製品や食料品などを受け取るメリットがあまりない。そこで上場企業の間では、投資家全体に配慮し、「株主への公平な利益還元」の観点から優待を廃止して増配や自社株買いによる還元へと株主施策を転換する流れが生じていた。 しかし、そう単純には進まなかった。
■ 新NISAデビューの若年層は長期安定株主として期待 市場改革で上場企業に資本効率の向上が求められる中、企業間での株式の持ち合い解消が進み、その影響で新規の株主獲得を急務とする企業も出てきたからだ。 さらには、切羽詰まった事情を抱える企業もある。 2年半前の新市場への移行時には、プライム市場の上場基準を満たさず「経過措置」として同市場での上場を維持した企業が295社あった。10月15日に東京証券取引所が公表したその後の動向によると、うち67社は9月末時点でも依然として経過措置の適用を受けていた。 その67社中51社は「流通株式時価総額」の未達によるもので、基準クリアの目標時期を2025~2027年に設定している。なお、経過措置は2025年3月以降、順次終了していく予定だ。 折しも、年初からの新しいNISA(少額投資非課税制度)の活況で、株式市場では個人投資家が存在感を増している。新規株主や時価総額の増加を目指す企業が「個人株主獲得」に向けて株主優待を拡充するのは自然な流れと言えるだろう。 とりわけ新NISAで投資デビューした若年層には、長期安定株主になってもらいたいという思惑も働く。 その結果、今年に入って新たに株主優待を導入したり、優待内容を手厚くしたりする動きが相次いでいる。 一例が、初めて優待を導入したソフトバンクだ。