バケツの底が抜け始めたNHK受信料収入は1年で429億円減…全世界に売れば生き残れる"巨大鉱脈"の4つの番組
■自分らしさの「光る君へ」 各番組に関して細かく見ていこう。 個人視聴率が1割強下落した「光る君へ」(吉高由里子主演)は、男女年層別では、F4(女性65歳以上)を除く男女全層で下落(前作比較、以下同)となった。また特定層別視聴率でも、大半の層で苦戦したと言わざるを得ない。 ただし例外となる層があった。「自分らしさを自分らしく表現する」を重視する20~40代の女性だ。 物語は紫式部が主人公。世界最古の女性文学といわれる『源氏物語』を執筆した人物だ。当時の一般的な女性とは異なり、「私は私らしく、自分が生まれてきた意味を探してまいります」と、大好きだった藤原道長(柄本佑)からの「妾」の誘いも断っている。 1000年も前に人間とは何かにこだわった紫式部。安易に周囲に迎合しない生き方が、若い女性を中心に多くの「自分らしさ」を重視する人々に深く刺さったようだ。 ■こだわりの「虎に翼」 「光る君へ」とグラフの形が一見似ているが、実はまったく対照的だったのが朝ドラの「虎に翼」の寅子(伊藤沙莉)だ。 「光る君へ」を好んで見ていた「自分らしさ」重視の若い女性は、この作品はあまり見なかった。 代わりに「こだわり」が強い人々には大いに関心を持たれた。「光る君へ」が女性の内面に向かった物語だとすると、「虎に翼」は女性をめぐる社会を問うたドラマだったのが影響したのか。 主人公の口癖は「はて?」。安易に相手や周囲に妥協せず、自ら納得するまで問い続ける姿勢は、紫式部に似ているが、本作は「こだわり」の強い人々が魅せられたのである。
■内外を動かす「宙わたる教室」 「宙わたる教室」(窪田正孝主演)は「自分らしさ」重視派にも「こだわり」が強い派にもよく見られた。 定時制高校を舞台としたドラマで、学習障害で負のスパイラルから抜け出せずに悩む生徒や、起立性調節障害を抱え保健室登校を続ける人など、「不良品」と位置付けられる生徒が集まっていた。 ところが、主人公の藤竹先生は、生徒一人ひとりが前をむけるように寄り添う。 そして学会発表まで漕ぎつける。科学と効率性、定時制への偏見などと対峙しながら、「知る楽しさ」を個々の生徒に実感させ、「どんな人間にも必ず可能性があります」という信念を、生徒や周囲の大人に納得させていく。 その意味で同ドラマは内外を動かしたと言えよう。 人の内面を変え、同時に教育や科学を取り巻く社会にも一石を投じた。新たな学園ドラマの可能性を切り拓いた一作だった。 ■存在理由を問う「チ。」 アニメ作品「チ。」は地動説を証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの物語だ。この視聴パターンは上記3作とも異なった。 「こだわり」の強い人々の数字が、前枠で放送された「鳥は主を選ばない」の2倍と急伸していた。 同アニメには3つの「チ」が重なる。1つ目は副題にある通り地動説の「地」。2つ目は、真実のために命をかける「知」の探求。そして既存体制の維持のために流れる「血」。視聴者の心は3つの「チ」の中で揺れ動く。 それでも信念を抱き、命を懸けても真実を追い求める姿勢や、感動が高まるように仕組まれた物語にハマっていく。「こだわり」こそがアイデンティティという展開に目が離せなくなるのである。