「弟の絵がドラマに登場するなんて夢のようです」 チューリップが描けるまで3年かかった自閉症の画家 作品がTBS金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」に
松澤佐和子さんによると、初めて教室に来た宏介さんは、窓ガラスにレースのカーテンがなびいているのを見て「わー、綺麗」と呟いた。その様子を見て、宏介さんに感性の豊かさを感じ、指導を引き受けたという。 しかし母・愛子さんによると、当時の宏介さんはある現象を見て何か言葉を発することなど全くなかったという。松澤さんにはそう聞えたのか、天の声だったのか。ともかく宏介さんは10歳になる直前に、絵を習い始めた。 ■チューリップを描けるようになるまで3年かかった 宏介さんとの付き合いが30年を超えた松澤さん。教室に来たばかりの頃は全く意思の疎通が出来ず、5分と椅子に座ることがなかった。 宏介さんは粘土は好きだが、絵に興味がなかったのだ。まずは、好きな粘土細工に絵の具を塗ることから始め、続いてクレヨンでの線描きを教えた。3年後、ようやくチューリップの花を、見ながら描けるようになった。 絵の師匠 松澤佐和子さん「宏介さんは、ものを見て描くことが当時は出来なかったんですよ。チューリップも『英語で言うとUみたいな形だよね』と簡単な形に例えて説明していきました。宏介さんにもインプットされていくので、複雑に見える花もシンプルな形から入っていくことで、本質的なものが捉えられるようになったんです。それでチューリップがやっと描けるようになって、チューリップ掛けるのにどれだけかかっただろう。見て描けるのになるまでに3年ぐらいかかりました。」 宏介さんには独自の色彩感覚があると話す。 絵の師匠 松澤佐和子さん「線が面白いんですよね、宏介さんの場合。そして独自の色彩感覚があるので、こういう所は絶対つぶさないようにしなきゃ、と思いました。自分が教えたいことを押し付けるのではなく、彼が持っている本来の才能を壊さない様に指導しました。」 ■草間彌生さんの隣に作品が展示された 転機は、2002年、宏介さん21歳の時に訪れた。 福岡市美術館で開催された「ナイーブな絵画展」に、宏介さんの水彩画「ワタリガニ」が、岡本太郎、山下清ら巨匠の絵画と共に展示されたのだ。