「弟の絵がドラマに登場するなんて夢のようです」 チューリップが描けるまで3年かかった自閉症の画家 作品がTBS金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」に
しかし47点の作品に9000円から50000円の値を付けて個展を開催したところ、知人以外の人も多く訪れ、9割の作品が売れた。 父・實さんは「宏介の絵を、お母さんの友達でもない見ず知らずの人がそんなに感じてくれたんだ」と驚き、以来69歳で亡くなるまで個展の開催に積極的に携わった。その後、兄の信介さんが、より大きな事業へと成長させていく。 ■暴れる弟が恥ずかしい…弟から離れたいと思っていた兄 兄・太田信介さんは2012年、勤めていた会社を辞めて弟と共に起業し、2022年「ギャラリー宏介」として法人化した。弟が絵を描き、兄が販売する。 個展に訪れた人に、宏介さんに代わって絵を解説するのも兄の信介さんだ。個展のために2人で出かけた先での食事は、宏介さんの好みに合わせる。 兄 太田信介さん「宏介はお酒もたばこもやりませんから、好きなものくらい食べさせてやりたいんです。普段は母が栄養面に配慮した手料理を食べさせているので。」 公私ともにバディーを組む、仲の良い兄弟。しかし、信介さんは弟の存在を長い間”隠して”いた時期があった 兄 太田信介さん「人に言ってどう思われるのが怖かったのだと思います。みんなでいる時に『弟に障害があってさー』と言って、チーンとなったらどうしようとか。女性とのお付き合いでも『弟のせいで振られたらどうしよう』とか考えていました。今では『モテないのは自分に原因がある』など言えるんですが若い頃は『弟のせいで何もかもうまくいかない』など責任転嫁するような勘違いもありましたね」 ■弟の絵には邪気がない「うまく描こう、失敗したらどうしよう、とか考えない」 心境に変化が起きたのは、大学卒業後のサラリーマン時代。 兄 太田信介さん「サラリーマン時代に管理職をしていたころ、売り上げや人間関係で凄いプレッシャーを受けて帰宅した時に、弟の作品を見ると癒されたんですよ。絵を通じて『小っちゃいことは気にしなくていいよ』と言われている気がしたんですね。弟の作品って邪気がないんです。うまく描こうとか、失敗したらどうしようとかそういうことを考えていないからダイナミックだし、人に元気や勇気を与えると思うんです。一方、自分は人の目を気にしてばかりで邪気だらけだったと思うんですよ。自然と涙が出た時に、『弟の絵ってこういう風な感情にさせるんだな」と初めて分かって『絵を世の中の人に伝えていきたいな』と思えたんです。絵を通じて弟が僕を励ましてくれているような気もしました」