なぜ公立進学校の相模原が高校野球の激戦区神奈川で8強進出を果たしたのか?
温品を中軸とする打線を支えるのが、ベンチに入れなかった3年生たちを中心とする分析班だ。対戦相手のデータを、新チームが結成された昨秋の県大会までさかのぼって微に入り細をうがって分析。ピッチャーの配球だけでなく、バッターの打球の方向なども綿密に調べ上げている。 プロも注目する左腕、及川雅貴を中心とする横浜投手陣や強力打線のデータも、すでに分析班から佐相監督を介して、24日の前日ミーティングで選手たちに伝授された。チームが一丸となった姿勢に、温品も「相手ピッチャーの傾向などもわかるので、すごく役に立っています」と声を弾ませる。 「カウント別のデータなどもそろっているので、球種やコースを絞れるし、思い切ってスイングすることができます。守備でも失点を防ぐというところで、勝利に役立っていると思います」 佐相監督のつてで2017年から招へいしたスポーツメンタルコーチ、東篤志氏の存在も見逃せない。たとえば今大会は東氏の指導のもとで、選手たちは「さあノーアウト満塁。打席には何々君が入ります」と自分が登場する状況を頭のなかで実況中継しながら、実際にバッターボックスに入っているという。 「そうすることで自分を客観視できて落ち着ける。ゾーンに入るからか、ブラスバンドや応援団の音や声が聞こえなくなるらしいですよ。無になるための心の状態は整っている。父兄を含めて、ウチはいろいろな方が関わってくれている。心から感謝しているし、あとは試合で最大限の力を発揮するだけです」 こう語る佐相監督は横浜、東海大相模、桐光学園、慶応を「私学四天王」と位置づけ、追いつき、追い越せを標榜してきた。なかでも横浜には初めて準々決勝に臨んだ2014年にコールド負けを、第1シードで臨んだ2015年も4回戦で対戦して0-3の完封負けを喫している。 「それでも、あまり勝ちを意識していない。なぜかと言うと、勝ちを意識すると、結果だけを求めようとすると人は不安になるからです。だからこそ緊張はしていないし、この子たちもしていない。そういう考え方のもとで、試合に臨む姿勢はできています」 文字通り自然体で挑む大一番へ。佐相監督以下の県立相模原は、25日早朝にグラウンドに集合。横浜投手陣の球筋をイメージしながら、最大のストロングポイントである「マシンガン打線」に最終調整を施すバッティング練習に臨んでから、決戦の舞台・横浜スタジアムへ乗り込む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)