なぜ公立進学校の相模原が高校野球の激戦区神奈川で8強進出を果たしたのか?
大詰めを迎えている高校野球の神奈川県大会は第1シードの桐光学園と第3シードの日大藤沢がベスト4へ進出。今日、25日には準々決勝の残り2試合が、横浜スタジアムで行われ4強が出揃うことになる。かつて「神奈川を制するものが全国を制す」と呼ばれたほど私立の強豪校が群雄割拠する激戦区で旋風を巻き起こしているのが県立相模原だ。ベスト8のなかで唯一のノーシード校であり、偏差値68の公立の進学校。25日の第2試合で、夏の県大会4連覇を目指す第1シードの絶対王者・横浜と激突する。 県立相模原が夏の県大会でベスト8に進出するのは2014年、そして東海大相模に逆転サヨナラ負けを喫した昨年に次いで3度目となる。2014年秋にベスト4、2015年春には準優勝して夏の県大会の第1シードを獲得するなど、私立勢を打ち負かす「公立の雄」としての存在感を強めてきた。 今大会でも1試合平均で8点を叩き出してきた、チームの看板でもある強力打線は、2012年度に赴任した体育教諭の佐相真澄監督(60)の存在を抜きには語れない。「バッティングの伝道師」として知られる同監督が、いかに県内の中学生にとって憧れの存在だったのかは部員数が物語っている。 3年生が31人、2年生が25人を数えるのに対して、今春に入部した1年生は13人と少ない。昨年8月に還暦を迎えた佐相監督が、定年退職に伴い辞任するのでは、と思われたためだ。再任用されて引き続き「私学に打ち勝つ野球」を追い求めている公立の名将は、理論的かつ情熱的な指導の源泉を反骨精神に凝縮させる。 「私学は私たちと違って、ほしい選手を取って鍛え上げることができる。ウチは選手たち本人が来たいと望み、受験という難関をかいくぐって来てくれるチーム。そうした違いやギャップを乗り越えた指導をしなきゃいけないし、だからこそ何くそという思いで私学に勝ちたい、という思いがすごく強い」 相模原市内の公立中学を全国大会出場へ3度導き、2005年度から県立川崎北で高校野球の指導者に転身。県立相模原を強豪校へ育て上げた佐相監督は2017年に初の著書『神奈川で打ち勝つ!超攻撃的バッティング論』(竹書房刊)を、今月にはDVD『私学と対等に打ち合うためのバッティング理論』をジャパンライムから発表。独自の理論を文字と映像で、より具体的に選手たちへ伝授している。