不登校が減少に転じた大阪・八尾市の挑戦…仮想空間に交流の場、子ども食堂やフリースクール活用
文部科学省の2023年度「問題行動・不登校調査」で、大阪府内の不登校の小中学生が過去最多を更新し、全国的にも増加傾向が続く中、中学校で減少に転じた八尾市の挑戦が注目を集めている。仮想空間を含め、学校内外に居場所を作り、どこにもつながりがない児童生徒を減らす取り組みを進めており、市教育委員会の担当者は「誰一人取り残さない教育を実現したい」と力を込める。(福永正樹) 【図】不登校の児童生徒数といじめ認知件数、このように推移している
病気や経済的理由などを除き、年間30日以上登校していない状況を、文科省は「不登校」と定義する。昨年度、全国では34万6482人(前年度比4万7434人増)と初めて30万人を超え、府内でも2万3006人(同2202人増)と過去最多だった。
児童生徒1000人当たりで、府内の小学校は19・7人(同2・7ポイント増)、中学校67・6人(同5・9ポイント増)。八尾市は小学校が17・4人で前年度比3・1ポイント増だったが、中学校は54人、同2・7ポイント減だった。
新たに不登校となった生徒が65人減と大きく減ったためで、市教委の担当者は「不登校支援の意識が高まり、対策の手引きや、子どもへの声かけなどの取り組みが学校や地域に浸透してきた」としている。
八尾市では、不登校の子や保護者の相談に心理カウンセラーが応じ、社会性を身に付けるため、個別学習や小集団の活動を行う学校外の「教育支援センター」への通室につなげてきた。
23年度には、家から出ることが難しい子どものため、インターネットの仮想空間に自身の「アバター(分身)」を操作して交流する居場所も設けた。すごろくやクイズなどで交流するほか、学習支援も受けられる。市教委は「少しずつ自信を付け、校外の教室を訪れてテストを受けられるようになった子もいる」とする。
今年度からは、地域ボランティアが登校時の付き添いや別室での見守りなど、不登校の子どもらを直接支援している。保護者同士が悩みを相談できる「癒やしの場」も提供している。フリースクールや子ども食堂など民間事業者と話し合い、対策の改善にも力を入れる。