イチロー氏 強豪私立を倒すためのアプローチ「難しいところを早い段階で…」大阪・大冠指導で打撃の極意
マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(51)が9、10日の2日間にわたり大阪の大冠野球部を臨時指導した。野球部訪問は昨年12月の沖縄・宮古に続いて5年連続通算9校目。 【写真】指導を終え、大冠の生徒らと記念撮影するイチロー氏 サプライズで練習に現れたイチロー氏。「ここまで言うのは初めて」と強豪私立を倒して甲子園を目指す同校の選手たちに「本気」の言葉であいさつ。その後、生徒とは別にランニングをして、アップ姿をチェック。そして実戦をイメージした独特なダッシュ練習を見ると「凄くいい練習をしている」とうなった。 そして選手たちからの質問タイム。「外野からのスローイングはどうやったら改善できますか」と聞かれると、「ざっくりきたね」にニッコリ。「いいのと悪いのの違いは分からない?僕のゴルフみたい(笑い)やってみる?」というと質問した選手とキャッチボールを始め、驚いた表情で「ピッチャーっぽいね。この距離(塁間ぐらい)は全然問題ないけど。全然大丈夫。動き自体はうまいと思うよ。走ってどうか。バランスだと思う。投げ方がどうかではない。後ろから来ているわけだから自然に捕れれば。止まっているイメージをつくった方がいいかも。明日もう一回見てみる」と真剣な表情で語り掛けた。 続いて「外角を待っていますか?」の問いには「インコースが好きで。打者有利なカウントでは(内を)待っていることが多かった。内と外、どっちを待つかは状況にもよる。得意なところは何とかなる感触があるなら、苦手なところを待つアプローチはある。得意なところは知っているから投げてこないでしょ。格上は難しいところをどうヒットにするか。なるべく難しいところを早い段階で仕留めるか」と世界一のヒットメーカーの極意を伝授した。 「夢叶(かな)え甲子園」――。今回の指導のきっかけは、強豪私立がひしめき合う大阪で「本気で甲子園を目指す」公立校の選手全員からの手紙だった。2年28人(うち1人は女子マネジャー)、1年18人(同1人女子マネジャー)に加えて7月に引退した3年生部員も14人中13人(同1人女子マネジャー)が参加。イチロー氏は、情熱は伝わったが、自分たちの現在地や強豪私立を倒して勝ち上がることの難しさをどこまで理解しているのか、聞こえのいい目標を持つことで満足してしまっていないだろうか、彼らの覚悟と正しいアプローチができているのか、そこを確かめたかった。「強豪私立を倒す」という目標を掲げる公立校の本気度を厳しい目で見てみたい――。その思いで訪問を決めた。 練習の最後の最後にはフリー打撃を披露。約30スイングの実演で75メートルのフェンス奥にある体育館の天井に数球乗せる。途中で代わりに打った選手も体育館上へ打ち込むと、イチロー氏の白い歯がこぼれ、選手たちもキラキラした目で“イチ流”の打撃に見入っていた。