「実は10年かかると思っていた」《6年連続最下位チーム》を劇的に再建…!横浜DeNAベイスターズ元スカウト部長・吉田孝司氏が語った「再建の舞台裏」
「キヨシ、これは大変なことになったよ」
――吉田さんは、90年代の巨人と横浜でスカウトをやられましたが、チーム状況もまるで違いました。 「巨人にいた時代のドラフトは、逆指名をいかに取り付けるかということに走り回っていたよね。2004年に一場事件(※当時、明治大学硬式野球部に所属していた一場靖弘に対し、ドラフト自由枠での獲得を目指していた複数球団が「栄養費」との名目で現金を渡していたことが発覚した)でスカウトを辞めて、その後ドラフトの制度も変わったけど、2012年に高田さんからDeNAベイスターズに呼ばれた時は、チーム状況から何もかもが違った。戦力がまるでなかったから、とにかく即戦力を獲ることから始めなければいけなかった」 ――ベイスターズは打線の主軸だった内川聖一と村田修一がFAでいなくなって、投手も三浦大輔以外はローテになかなか名前が挙がってこない状況でした。 「そうだったね。ベイスターズに入って、最初にGMの高田さんと監督の中畑清と3人でメシを食べに行ったんだよ。じーっと戦力を見たんだ。それで言った。『キヨシ、おまえこれは大変なことになったよ。このチームで戦えるようになるまで5年から7年は掛かる。それまで苦労は掛けると思うが辛抱してやってくれ。俺たちはなんとか即戦力を獲れるように頑張るよ』ってね。でも正直な話、10年は掛かると思っていたよ」
とにかく大学・社会人の即戦力を優先
――当初、球団は3年でCS、5年で優勝と言っていました。実際にCSまで5年、優勝はまだ成し得てこそいませんが、今では毎年Aクラス争いをできるチームになりましたね。 「うーん……まぁ、そんなに簡単には勝てないよねぇ(笑) ただ、結果が出るようになったのは、本当に選手が必死にやってくれたおかげだよね。あの2012年のスタートの時に、高田さんと話したことは、とにかくすぐに戦力として使える大学生と社会人の選手を獲ってくること。高校生を育てているヒマなんかない。最優先はピッチャーだったね。あとはショートかな。 最初の2012年のドラフトも全員大学・社会人を指名しているでしょ。1位は東浜巨(亜細亜大→ソフトバンク)だったけど抽選で外してね。ショートも足りないということで駒澤大学の白崎浩之を指名した」 ――2012年は日本ハムがメジャー志望の大谷翔平を強行指名していますが、指名は考えなかったのでしょうか。 「実力的には素晴らしいけどね、絶対に即戦力が欲しいあの時のベイスターズで、そんなドラフト1位の枠を棒に振るかもしれないギャンブルなんてできるわけないよ。それよりも来てくれる即戦力。競合もできれば避けたい。抽選で負けたら……と考えてしまうからね」
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