2021年の岡田将生『エンターテインメントは絶対必要』
閉鎖空間で削られるメンタルとフィジカル
最新作となる映画『CUBE 一度入ったら、最後』(清水康彦監督・22日公開)は1997年に公開された、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督のカナダ映画『CUBE』のリメイクだが、閉鎖空間での演技を経験した。 「あの閉鎖された空間に毎日閉じ込められているとメンタル面もフィジカル面も少しずつ削られている感覚があるんです。それを芝居に活かせればいいなと思って臨みました。シチュエーションが変わらない中でそれをどう見せていくか、すごく大変な作業ではあったと思います。でも皆さんと一緒に作品をつくっていく過程は素晴らしい時間でもありました」 オリジナルはずいぶん前に観てよく知っていたという。 「それで、この作品の撮影に入る前にもう一回観ましたが、やっぱりアイデアにあふれていてすごく面白い作品だなと。リメイクのハードルは高いなっていう気持ちもありましたが、コロナ禍で社会全体に閉塞感が漂う状況下で、今だからこそ作る意味を台本から感じ取れたんです。この時期だからこそやるべき映画なのかな、と。最新の技術を使って映像的にも面白いので、オリジナルのファンの方にもオリジナルを知らない方にも楽しんでいただけるのではと思います」 岡田は同作で千葉県出身のフリーターでコンビニ勤務という越智真司役を演じている。 「すごく普遍的で多分あの空間に入ったら誰もが越智のようになってしまう可能性がある、と思うんですよ。だから共感してもらえることが多い役なんじゃないかなと。日常の中でストレスをためながら、人の顔色をうかがいながら生きてる瞬間が僕もあるし、越智の気持ちをわかっていただける瞬間はあるんじゃないかなと」
ただ普通に生きることを心がけている
コロナ禍で社会に閉塞感がまん延している状況だが、役者としての姿勢には変化はないと力強く語る。 「やっぱり去年は(コロナ禍に)慣れていない部分もたくさんあって、果たしてエンターテインメントって必要なのか不必要なのか、なんていうことが問われているときもありましたよね。僕は絶対必要だと思っているし、現場でも作品から力を与えてもらっている瞬間があったので。役者として変わったことはありません。心がけているのは、ただ普通に生きることだけです。特別何かってわけじゃなくて一日一日を一生懸命生きようっていうことです。理想の俳優像というのはないのですが、求められる役者になりたいと思っています。こういう役を岡田にやらせたいなって、そんなふうに思ってもらえる役者でありたいんです」 終始ソフトで穏やかな語り口調の中にも強い意志を感じる。 (写真と文・志和浩司) ■岡田将生(おかだ・まさき) 1989年8月15日生まれ、東京都出身。2006年にデビュー。09年、映画『重力ピエロ』や初の主演作となった『ホノカアボーイ』などで各映画賞の新人賞を受賞。翌10年には映画『告白』『悪人』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞に輝き、12年にはNHK大河『平清盛』で源頼朝役を演じた。22歳にして大河ドラマ初出演、ナレーションも担当したことが話題になった。近年の主な出演作に、『何者』(16)『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(17)『銀魂』シリーズ(17,18)、『伊藤くんAtoE』『家族のはなし』(18)『そらのレストラン』(19)『星の子』(20)、『さんかく窓の外側は夜』『Arc アーク』『ドライブ・マイ・カー』(21)などがある。10月22日に「CUBE 一度入ったら、最後」が公開、11月19日には主演映画『聖地X』の公開を控える。