年間200万人がアルコール依存を治療―依存者にセカンドチャンス与える米国
リハビリに入るきっかけはさまざま
アルコール依存症の人が断酒を目指すきっかけはさまざまです。自らの意思でAAのような互助グループに参加する人もいれば、家族などから「インタベンション」(介入)を受けてリハビリを始める人、依存に関連した罪を犯して裁判所からリハビリを命じられる(コートオーダー)人もいます。 「インタベンション」は、日本ではまだ、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、訓練を受けた介入役「インタベンショニスト」と一緒に家族や友人が、依存症者に現実を受け入れてリハビリを受けるよう説得するというものです。 プロの助けを借りないで家族や友人だけでする場合もありますが、National Council on Alchoholism and Drug Dependence (NCADD)のガイドラインによると、プロに導かれたインタベンションならば、90%超がリハビリに同意するそうです。依存症大国の米国はリハビリ先進国でもあるので、インタベンションも回復プロセスのひとつとして広く一般に導入されています。 流れとしては、最初にインタベンショニストが家族や友人の“誰”を介入に参加させるか決め、その参加者たちに対し、「底つき体験」(ボトムライン)を本人にしっかり(愛情を持って)示すよう指導します。 つまり、このままでは死ぬしかない依存症者に、「どれだけ愛しているか」、「どれだけ大事に思っているか」を伝えた後、リハビリを受けないのであれば、たとえば「もうお金を渡したり、住む場所を提供したりしない」、あるいは「関係を断つ(離婚など)」などと伝えます。 ここでゆらゆらしている参加者がひとりでもいると、依存症者はすぐにその「もっとも弱いリンク」を嗅ぎ分けて付け込み、リハビリに行かなくていい理由を導き出してしまうので、インタベンショニストによる事前の指導・話し合いが重要です。 インタベンショニストは、家族や友人に対し、依存症は本人のものであって、共倒れしてはいけない、共依存になってはいけないと諭したり、重症の場合は共依存専門のリハビリを勧めることもあります。「依存症は家族の病気」とよく言われるように、依存症者が近くにいる状態に慣れたすえ、家族もその状態に依存してしまうことで、事態をさらに悪化させていることが多々あるのです。 本人の依存の種類や程度、性格やバックグラウンド(たとえば信心深い人なら12ステップなど)から、もっとも適したリハビリプログラムを選ぶのもインタベンショニストの仕事です。ちなみに日本でも、米国スタイルにならったプロによるインタベンションを手がける団体があるようです。