20代の休職者も増、医師が語る「教員の精神疾患」 年代問わず増えている「職場や保護者」の悩み
「一見、元気な人」にも落とし穴がある
――長らく教員の精神不調の問題が解決されない理由は、どこにあると思われますか。 学校現場では、年々「〇〇教育」などビルドアンドビルドで課題が増えており、その対応に追われています。コロナ禍以降は、ICTの活用も推進されています。取り組むべき課題が増えるほど付随する問題も出てきますので、対応しなければならないことがどんどん増え、人手不足も相まって大変さが増しているのではないでしょうか。 ――学校におけるメンタルヘルス対策として重要なポイントについてお聞かせください。 最近口数が少なくなったとか、1人でいることが多くなったとか、ちょっとした変化がサインになることはありますが、精神疾患の発症は本人も周囲も気づかないことが多いもの。一見、元気な人にも落とし穴があるんです。とくに過重労働に慣れて疲労感を感じなくなっているときは危険で、その状態でやりがいが損なわれる出来事が起こると、急に落ち込んで一気に疲れが出て急激に落ち込んでしまいます。 この時期ですと、元気に頑張っている新規採用教員の方にも注意が必要です。ニコニコしていても、本人は不調を自覚していることがあります。順調にやってきたベテラン教員も、「自分でやったほうが早い」と仕事を抱え込む、率先して難しいクラスを持つといったことが長く続くと落ち込みやすい傾向にあります。 そのため、ラインケアにおいて管理職は常日頃から職員間の信頼関係を築くこと、セルフケアでは自分の状態に意識して目を向けることが重要です。 また、調子がよいときと悪いときでは、力点を変えなくてはいけません。本人の調子がよいときにおいては、やる気をかき立てるようなラインケアや、理想を持って頑張るようなセルフケアで、生き生きとしたよい循環をつくることができます。しかし、不調のときはそうしたケアではむしろメンタルを害するため、今できることを着実にやるようなケアにシフトしていくことが大事です。