20代の休職者も増、医師が語る「教員の精神疾患」 年代問わず増えている「職場や保護者」の悩み
「大人との関係」が背景にあるケースが増加
――文科省が令和4年度に行った「教員勤務実態調査(確定値)」の分析結果では、「在校等時間が長い」「年齢が若い」「担任する学級に長期欠席者(不登校)が在籍している」教員ほど、相対的に心理的ストレスの状況が悪いと指摘されています。こうした傾向も実感されていますか。 やはり若手教員の方は、学校に残って長時間仕事をすることが多く、「若いからできるはず」「若いから経験を積みなさい」と言われ、断れない仕事が増えているように見えます。その結果、限界を超えてしまうケースは多いです。 不登校の対応に関しては、児童はもちろん、保護者にも気を使わなければならないため、負担が増すのだと思います。自分が担任している間に新たに不登校が発生すると、学級経営にもすごく神経を使うと聞きます。 ――メンタル不調に陥る教員の背景として、顕著な特徴はありますか。 これまでは学級崩壊など生徒指導に苦慮してきた教員の方々が最も多く、3~4割を占めていたのですが、最近では同僚や上司など職場の人間関係がつらいと訴える方々が年代問わず増えています。コロナ禍対策が落ち着いた頃から様相が変わってきて、驚いています。 推測になりますが、指導の大変さがなくなったわけではなく、むしろ常態化していて、その苦しさから救われたいと思う期待が同僚や上司に向かうようになったのかなと。そこで人間関係がうまくいかなくなると、調子を崩してしまうのかもしれません。また、保護者対応の悩みで診察に来られる先生方も増えており、子どもとの関係ばかりではなく大人との関係が不調の背景にあると感じます。 ――皆さん、ご自身の不調を自覚してすぐに病院へ足を運ばれるのでしょうか。また診断後は、どのようなプロセスで回復されるのでしょうか。 体調の異変や苦しさを感じつつも、仕事は続けたい一心で年単位で我慢してしまうなど、ギリギリまで頑張った末にやっと病院に来られる方が多いですね。 その後は、仕事でご本人が悩んでいる場合や、治療しながら仕事を続ける場合は、教頭や校長など管理職の方もお呼びして話し合いをします。現場は人手不足のため、もし休職となると学校運営にダイレクトに影響が出るので、皆さん積極的に来られますね。ご本人の受け止め方と周囲の見方が違うこともあるので、現場との情報共有は大切です。 治療しながら仕事を続ける場合ですと、授業以外の校務分掌は一時的にはずしていただくなど、とにかく仕事を減らすようお願いしています。環境調整がうまくいって薬が合うと、早ければ2週間ほどで効いてきて、そのまま回復される方もいらっしゃいます。 適応障害の場合は不調の原因が明確ですので、原因の軽減を目指します。例えば部活動をはずしていただくなどの調整をしてうまくいくケースもあります。