日銀のマイナス金利「深掘り」はある? 一連の報道を読み解く
日本銀行が現在のマイナス金利政策を「深掘り」して追加緩和を行うのではないかとの観測が注目を集めています。日銀が18日、19日に開く金融政策決定会合ではどのような政策判断がなされるのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストが一連の報道から読み解きます。
黒田総裁「深掘り」発言が市場の臆測呼ぶ
日銀の金融政策は、(1)短期金利をマイナス0.1%、(2)長期金利を0%程度に固定、(3)長期国債の買入れ、(4)ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)の買入れ、という4つの柱で構成されています。(1)と(2)は「イールドカーブコントロール(YCC)」、(3)は「量的緩和」と呼ばれ、(4)はリスク性資産の購入を通じた「質的緩和」と位置づけられています。 日銀の金融政策をめぐっては「残された緩和手段が少ない」「これ以上の緩和強化は逆効果」といった見方が支配的ですが、政策当局としての日銀は「金融政策に限界はない」として「(必要ならば)躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」との姿勢を示しています。 そうした中、9月7日付けの日経新聞朝刊は「マイナス金利の深掘り 選択肢」と題した黒田総裁のインタビュー記事を掲載しました。当該記事によると黒田総裁は「(世界経済は)さらに下方リスクが高まっている」として追加緩和の必要に言及しつつ、「(マイナス金利)深掘りは従来から示している4つのオプションに必ず入っている」と発言したとのことです(4つのオプションとは冒頭で示した4つの柱を指します)。 日銀が7月に「『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれるおそれが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」(※金融政策決定会合の声明文に記載されている文言)と警戒トーンを強めたばかりだったこともあり、この記事を目にした一部の市場関係者は、日銀が9月にマイナス金利を深掘りするサインであると受け止めたようです。「黒田総裁がこのタイミングでインタビューに応じ、マイナス金利深掘りに言及したのは市場関係者に織り込ませる意図があるのでは?」と解釈したのです。