1000人以上を看取ってきた在宅医が教える、自分らしい<逝き方>を実現するために考えるべき3つのこととは?人生の最終段階では「医療的な正解」がない
◆やりたいこと 最後の(3)やりたいこと(かなえたい夢)も大切です。 自分のやりたいことをやっておかないと後悔しながら人生の最終段階を過ごすことになるからです。 ただし、やりたいことをやるためにはタイミングが重要です。病状が進んで動けなくなってからでは、やりたいことができないまま最期を迎えることになります。 病気によっては、余命1カ月でもそれほど体調が悪いように見えないケースがあります。そこで「もう少し体調がよくなってから」とやりたいことを後回しにしていると、最後のチャンスまでも失ってしまうことがあります。 やりたいことがあるのなら医療者やご家族とよく話し合い、適切なタイミングで悔いのない選択をしてほしいと思います。 ここまでご説明した(1)過ごす場所(自宅か、病院か、施設か)、(2)やってもらいたいこと(受けたい医療や介護)、(3)やりたいこと(かなえたい夢)については、なるべく早い段階から考えておきましょう。 病状が悪化してからだと、情報収集をして自分なりの考えをまとめるのも大変になります。 可能ならば、人生の最終段階に入る前にやりたいことや延命治療について一度考えてみることをおすすめします。まだ特に持病もなく、入院や介護が遠い未来に思える人も一度考えてみるといいでしょう。 前もって考えるプロセスを踏んでおくことで「自分はこんなふうに考えていたのだ」と理解が深まりますし、いざというときに下した決断についても納得の度合いが高くなります。
◆自分の価値観を共有しておく ただ、人生の最終段階について自分の考えをまとめるといってもどうすればいいか、わからない人もいるかもしれません。具体的にはこれから挙げるようなことを考えてみるといいでしょう。 ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という言葉をご存じでしょうか? もしものときのために、自分が望む医療やケアについて前もって考え、家族や信頼できる人、医療・ケアチームと話し合い、共有するプロセスのことです。 ここ数年、厚生労働省が「人生会議」という愛称で普及活動を進めているので耳にした人もいるでしょう。 まだまだ先のことと思っていても、いつ何時、命に関わる大きな病気やケガをするかわかりません。命の危険が迫った状態になると約70%の方が、これからの医療やケアなどについて自分で決めたり、人に伝えたりすることができなくなったりするといわれています。 そのような状況になったときは、家族など信頼できる人が、医療・ケアチームと医療やケアについて話し合いをすることになるため、事前に自分の価値観を共有しておくことはお互いにとってとても大切です。 万が一のことがあっても、自分の希望がかなえられるように、また周りが困らないようにするためにも、自分が大切にしていることや望んでいること、どこで、どのような医療・ケアを受けたいかを自分自身で考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有してみましょう。
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