1000人以上を看取ってきた在宅医が教える、自分らしい<逝き方>を実現するために考えるべき3つのこととは?人生の最終段階では「医療的な正解」がない
◆自分らしい「逝き方」 私はこれまで、訪問診療をおこなう在宅医として1000人を超える患者さんを看取ってきました。そんな私の考える幸せな最期のあり方とは「生き方も“逝き方”も自分らしく」ということです。幸せな最期は、自分らしい“生き抜き方”を選んでこそ、実現します。 2018年に亡くなった俳優の樹木希林さんは「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という言葉を残しました。まさにこの言葉のとおりだなと在宅医療の現場で実感する毎日です。 では、どうすれば人生の最期を幸せに、自分らしく過ごせるのでしょうか。私は、次の3つを考えることが自分らしい“逝き方”の実現につながると考えています。 (1)過ごす場所(自宅か、病院か、施設か) (2)やってもらいたいこと(受けたい医療や介護) (3)やりたいこと(かなえたい夢) まず(1)過ごす場所(自宅か、病院か、施設か)についてです。 どこで過ごすのが適切かは、患者さんの病気や症状、家庭の環境などによって違います。最期を迎えるのは病院がいい、と一概に言うこともできません。 「本当は家で過ごしたい」と願っている人が望めば家に帰れるということを知らないままに病院で亡くなってしまうのを私はしばしば目にしてきました。自分の希望がかなわないというのはとても残念ですし、悲しいこと。悔いの残ることだと思います。 自分の気持ちとその他の条件を考え合わせて、納得のいく場所を自分で選んでほしいと願っています。
◆やってもらいたいこと (2)やってもらいたいこと(受けたい医療や介護)についても、自分の考えを整理して納得のいく選択肢を選ぶことが大事です。胃ろうや人工呼吸器のような延命治療は、一度開始すると途中でやめることは簡単にはできません。なぜなら、命が終わってしまうことを意味するからです。 急な決断が必要となったときに、胃ろうや人工呼吸器について一から理解して考えをまとめることはできません。前もって正しい知識を得て、自分がどうしたいかを考えておくことが大事です。 考えておくこと自体が一番大事なので、「考えたけれども決められなかった」となっても大丈夫です。仮に決まった場合は、それをご家族や医師、関係者に伝えておければなおいいでしょう。考えて決めたことでも、気持ちが変わったら変更して一向に構いません。 前もって考えるプロセスを踏むことで、いざというときに後悔しない選択をすることができます。受けたい医療や介護がはっきりすれば、(1)の過ごす場所も決めやすくなります。
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