1000人以上を看取ってきた在宅医が教える、自分らしい<逝き方>を実現するために考えるべき3つのこととは?人生の最終段階では「医療的な正解」がない
2023年に厚生労働省が発表した「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、人生の最終段階における医療・ケアについて、半数以上の人が「考えたことがある」と回答したそう。そのようななか今回は、お金や住まいに困らず、将来すんなり逝くための「ダンドリ」について専門家に解説していただきました。在宅医療専門医の中村明澄先生いわく「体調が優れないからこそ、好きなように最期のときを過ごしたいと願うのは当然のこと」だそうで――。 【書影】若いうちに準備すべきことを8人の専門家が解説『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』 * * * * * * * ◆最期を過ごす場所は自分で決めていい どんな年代の人であれ、みんな自分にとって居心地のよい場所で過ごしたいと願っています。それは人生の最終段階を迎えた人も同じです。体調が優れないからこそ、自分の落ち着ける場所で好きなように最期のときを過ごしたいと願うのは当然のことで、ぜひともかなえてほしいと願っています。 人生の最期を迎えるにあたって重要なことがあります。それは、「先生にすべてお任せします」と医師に従うのではなく、医師や関係者とともに考えて自分で決める、ということです。 一口に「終末期」といっても、病気の種類、病状、患者さんの事情や思い、価値観は一人ひとり違います。「自分がどうしたいか」を考え、自分の価値観に合わせて選択することが、納得のいく最期を迎えるために欠かせません。 また、人生の最終段階では「医療的な正解」がなくなってきます。そのため、自分がどうしたいかに合わせて、どこでどのような医療を受けるかを自分で選択することができます。詳しく説明しましょう。 私たちは病気になったら病院へ行き、医師の診断と方針に従って治療を受けます。医師はその時点での医療的な正解と思われるものを示し、私たちはよほどの疑問がない限り、それに従う。それで問題はありません。 たとえば今、あなたが40代、50代だとします。肺炎と診断され、医師から「入院して治療したほうがいいと思います」と言われたら、医師のすすめに従って入院を考えるでしょう。 しかし、あなたが同じ症状・同じ診断で90歳だったとしたら? 必ずしも入院がベストとは言えなくなるのです。入院して肺炎が治ったとしても、足腰が弱ってしまって寝たきりになる可能性があります。認知症が急速に進んで、入院前と同じようには生活できないかもしれません。病気は治っても、その後の生活が大きく変わってくるかもしれないのです。 それゆえ、人生の最終段階では医師も「これが最適解です」とは一概に言えなくなります。 いくつかの選択肢のメリット・デメリットと、その後に考えられる生活の変化を説明されたうえで、医師と患者さんがいっしょに考え、最終的には患者さん自身とご家族が選択する。そんな場面が増えてきます。
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