都立高校vs私立中高一貫校「指定校推薦」の知られざる実態 私立校では理不尽な事態が起こるケースも
公立の「専門科高校」からの大学進学ルート
私立の中高一貫校が普通科の進学校かそれに準ずる学校がほとんどであるのに対し、公立高校には進学校以外にも専門性を育む多種多様な高校が存在し、その専門性を活かせる大学の指定校推薦枠を多数もっていることが多い。 『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(学研)の著者で、Xアカウント「東京高校受験主義」で4万8000人のフォロワーをもつ塾講師の東田高志氏はこう語る。 「私立高校には、男女別学であるとか、ミッション系であるとか、そういう方向性での多様性がありますが、教育の中身で見ていくと、公立高校のほうが多様化が進んでいます。 たとえば、都立国際高校は英語教育と国際教育に重点を置き、海外大への進学を目指す高校で、2024年度はIB(国際バカロレア)コースから海外の名門、英オックスフォード大や米プリンストン大の合格者が出ました。国内では、早慶や上智など多数の指定校推薦枠をもっています。国際科のある公立高校は、他にも神奈川県や兵庫、奈良にあります。 また、理系進学に特化した都立多摩科学技術高校は、大学並みの研究設備が整い、理系の大学への指定校推薦枠を多数もっています。理数系の優秀な生徒が集まる高校で、3年間の研究成果をまとめて、学会などのポスターセッションに応募して賞を取り、その成果を掲げて旧帝大などの総合型選抜を突破していく生徒が多数います。同様の科学技術高校は東京だけでなく、秋田や静岡、福井、兵庫、徳島、福岡など全国にあります」 国際や多摩科学技術は、都立の中でも上位にランクされる高校として知られる。そのほか、受験業界で「中堅以下」とされる都立高でも、さまざまな大学進学ルートが存在する。農業・商業・工業高校には、受験勉強が苦手な子でも“逆転ホームラン”を狙える進学ルートがあるという。 「勉強が得意でないタイプこそ、高校受験から大学進学のルートがすすめられます。農業高校や商業高校、工業高校など専門科の高校は昔からありますが、今はこうした高校からも大学に進学するのが一般的です。世田谷にある都立園芸高校は、農学部の推薦枠を多数もち、東京農大には指定校推薦枠や総合型選抜で続々と入っています。園芸高校は入学偏差値だけ見れば東京農大に入るには厳しいレベルです。なので、校長先生に推薦でこれだけ進学が出る理由を聞いてみたところ、『農業高校出身者は、実習のときに大活躍するから、大学が評価してくれている』とのことでした。実践から入った子は、理論の理解も早いものです。 商業科からも、指定校推薦を使って商学部や経済学部へ進学しています。大学ごとに『簿記○級以上』といった推薦の条件があって、それを利用して進学する。都立の第一商業高校はMARCHや國學院大、日大などの指定校推薦枠をもっていて、入学時の偏差値からすると、もし普通科の高校に進学していたらまず無理だった大学に進学しています。大学で税理士や中小企業診断士、社労士などの資格を取得し、その道に進む子もいます」(同前)
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