台湾茶ファン必読!世界中の愛茶家が集まる 最大級の台湾茶フェスティバル「南投世界茶業博覧会」レポート
【連載】リンさんの 台湾茶・聖地巡礼
「南投世界茶業博覧会」略して「南投茶博」は、台湾茶の最新トレンドが体感できる巨大イベントです。今年は10月5日から13日までの9日間開催され、多くの人でにぎわいました。その会場の様子をお伝えします。 【画像】もっと写真を見る(14枚)
静かなブームが続く台湾茶。いま、本場・台湾では新しい品種や製法が次々に生み出され、その楽しみ方もどんどん進化しています。宜蘭で台湾料理教室を営み、台湾茶コンテストの審査員課程も修めた林品君(リン・ピンチュン)さんが、日本人の知らない台湾茶の世界をご案内します。
そもそも台湾人にとって、台湾茶とは?
2010年に始まった南投茶博は今年で14年目。その規模は年々大きくなり、今年の延べ来場者数は100万人を突破したそうです(去年は90万人)。会場には30のパビリオンに300以上のブースが出展され、台湾茶を知り、飲み、楽しむことができます。その充実ぶりは、1週間通ってもすべてのお茶を味わい尽くすのは難しいと言われるほど。 台湾茶は、台湾人の日常生活に深く根付いています。茶芸館でゆっくり淹(い)れるだけでなく、コンビニでは阿里山茶や金萱茶(きんせんちゃ)などの冷茶が売られ、タピオカミルクティーのお店でも高品質な台湾紅茶や烏龍(ウーロン)茶が使われています。 家庭では食後にお茶を楽しむ習慣があり、茶博の会場には、気軽に淹れられるお茶を求めて一般の人も多く訪れます。あまり交通が便利とは言えない南投に、9日間で100万もの人が集まることから、台湾茶への愛が感じられます。
今年の南投茶博の目玉をピックアップ
注目は、有機茶、野生茶、白茶。さらに、新しい製茶法や品種の発表も。 有機島茶館では、毎年ベスト100有機茶を展示しており、試飲が可能。毎日異なるお茶が提供され、数日通うことで全種類を楽しめます。中でも、近年特に注目されている白茶は、中国のそれとは異なる台湾独自の製法で作られたもの。時間が経つにつれて味わいの変化を楽しむことができ、台湾茶の新しいトレンドを生み出しています。 黄金品茗館では、コンテスト受賞茶10種類を鑑定師の解説を聞きながら試飲できます。1kgあたり20万円を超えるものも珍しくないという高価な受賞茶を味わい、その後で気に入ったお茶の生産者ブースを探すのは贅沢(ぜいたく)な楽しみです。入場は有料(150台湾ドル)ですが、記念コップももらえます。 農業部茶及飲料作物改良場は、1903年に設立され、茶の品種改良や製茶方法の研究を続けてきた国の機関です。これまでに「台茶12号・金萱」や「台茶18号・紅玉」などの品種を生み出してきましたが、今年は新たに「台茶26号・豐鶴」が登場しました。紅茶や緑茶に適しており、コンビニやドリンクバーの需要が期待されています。また、新しい製茶法「橙茶」も発表され、近年人気の白茶を短時間で作る改良法として注目されています。多くのブースで試飲も行われ、来場者の反応が確かめられていました。 長年、野生の山茶を研究している台湾原生山茶文化学会からは、台湾原生山茶に関する新たな資料が発表されました。台湾原生山茶は、1万年前から存在する台湾固有の野生茶であり、その歴史は氷河時代にさかのぼることが分かりました。多くの台湾茶は19世紀に中国から持ち込まれたものですが、台湾原生山茶はそれ以前から原住民が薬膳茶として飲んでいたものです。ちなみに、よく知られている日月潭(にちげつたん)の紅玉紅茶は、実はアッサムと台湾原生山茶をかけ合わせたもので、中国茶のルーツを持たない台湾茶の一例です。 300以上の生産者ブースでは、茶農家や製茶師から直接話を聞くことができ、今年の出来具合や気候変化による風味への影響、茶畑の管理方法による味の違いなどを学べます。多くの種類を試飲できるため、きっと自分に合ったお茶が見つかるでしょう。ただし、ひたすら飲み続けるには体力や心の準備も必要です。