「日本沈没」70年代の原点を振り返る 共通する社会不安もドラマ好調の要因か
小栗旬主演の連続ドラマ「日本沈没-希望のひと-」(TBS系、日曜・午後9時)が好調という。1973(昭和48)年刊行の小松左京氏によるSF小説「日本沈没」はベストセラーとなり同年映画化、翌74年にはドラマ化された。他に漫画、ラジオドラマなどさまざまな表現形態で、未曾有の国家的危機を背景に「日本人とは何か」といったアイデンティティーを問いかけてきた。時を経て2006年に映画版リメイク、そして今回がテレビドラマとしてのリメイクとなる。70年代当時とは時代背景も日本の置かれている状況も異なるものの、社会不安が生活に影を落としているという意味では共通する部分もありそうで、それが好調の要因の一つになっているのかもしれない。
70年代「日本沈没」当時も社会不安が影を落とす
高度経済成長が終焉を迎え第1次オイルショックなど社会不安が生活に大きな影を落としつつあった70年代前半に空前のヒットを飛ばした「日本沈没」。1970(昭和45)年には総人口に占める65歳人口の割合が7%を超え高齢化社会が到来したと盛んにいわれた。73年のオイルショックでは物資不足が噂され全国各地でトイレットペーパーの買い占め騒動が起きた。あれから約半世紀、コロナ禍でも一時はトイレットペーパーをはじめとする衛生用紙が不足するなど似た状況がみられた。いまは超高齢社会とされるが2025年には戦後まもなくの第1次ベビーブームに生まれた“団塊の世代”が後期高齢者の年齢に達し、国民の4人に1人が75歳以上になるといわれる。医療や福祉、介護など急速に増大する高齢人口の諸問題に対応することがただでさえ求められる中、コロナ禍で生活が激変したことで経済的ダメージを受けている人々も多く、誰もが行く末を案ずる状況となってしまった。 そんな中、今回の「日本沈没」はサブタイトルに「希望のひと」を掲げ、「信じられるリーダーはいるか」と国家的危機に一筋の希望の光を見出すために奮闘する人々の姿を描く。原作を大きくアレンジし、小栗演じる主人公・天海啓示(あまみ・けいし)をはじめオリジナルの登場人物が多く登場する。松山ケンイチ、杏、仲村トオルら共演陣も豪華キャストをそろえるが、70年代の映画版とドラマ版の両方で小林桂樹が好演した日本地球物理学界の異端児・田所博士を演じる香川照之の怪演ぶりも話題だ。