コロナ禍を生き抜く演劇人 音声劇で稽古からリモート活用
コロナ禍でリアルな舞台・空間での上演がスムーズにやりにくくなったことはライブエンターテインメントに携わる人々にとってダメージだが、発想を転換して映像化や配信などで生き抜く道を模索する人もいる。稽古から完成まですべてリモート、音声だけのオーディオブックという形で作品に携わることになったという2人の演者に聞いた。(取材はリモートで行いました)
家族との時間が増えるなど良かったことも
俳優、タレント、MC、リポーターなど幅広く活躍するほしあいめみさんは「コロナ禍になってから、むしろ得られたことのほうが多い気がします」とポジティブに現状を捉える。 「ショッピングモールやホールで親子向けコンサートを定期開催していたのが軒並み中止になるなど寂しい思いもした反面、家族で過ごす時間がすごく増えるなど良かった点もあります。打ち合わせもリモートになったぶん時間を有効活用できるようになりました」 仕事面では宅録のナレーションの仕事が増えたという。 「オーディオブックの仕事で現役のラジオディレクターさんとご一緒したのですが、宅録でどうすれば音声がクリアに録音できるかなどレクチャーしてくださったんです。ディレクターさんからレンタルで機材(スイッチを入れると内蔵のマイクロSDカードに録音ができるマイクと、コンパクトに折り畳める吸音材のついた簡易的な録音セット)を私たち役者に送り『ガラスなどを背にした位置で録音しない』『布団やぬいぐるみを抱えて録音すると余分な反響がない音で録ることができる』といった具体的なアドバイスも受けました。この体験はナレーションの仕事を宅録で納品する際にとても役立ちました」
そのオーディオブックも、コロナ禍の影響から生まれたものだそう。2015年に出演した「ことでんスリーナイン」(作・演出:緑川憲仁)というほしあいさんの主演作で、初演はローカル鉄道演劇として香川県高松市のことでん(高松琴平電気鉄道)電車内で上演された。走行する車両で役者が“女子旅ファンタジー”を演じるのが特徴だったが、再演はコロナ禍のため音声のみのDVDオーディオブックという形態に置き換え、稽古から収録まですべてリモートで行ったのだという。