「宇宙はゴミだらけ」――NASAもお手上げの「宇宙ゴミ」回収に挑む、日本人起業家の奮闘
宇宙環境を維持する「ロードサービス」を目指して
現在、世界で一斉にスペースデブリに関するルール作りが進む。アストロスケールも国際会議の場で積極的に発言を続けている。 「ルール作りは、技術と両輪だと思っています。かつてオゾン層が破壊されたとき、代替フロンという技術ができてフロンガスの撤廃が合意されました。今はまだスペースデブリを除去する技術がないため、曖昧なままですが、除去技術が確立されたら、すぐに合意ができるはずです」
同時に衛星の保守点検・寿命延長の技術革新も進んでいる。わずか数年前までほとんど議論されなかった話題が、今では各国がリーダーシップをとりどんどん解決に向かおうとしている。その様子を岡田は心強く思っている。
「その昔、戦後に経済発展を遂げた時期に、モータリゼーションが日本全国に拡大しました。高速道路が全国に延伸すると、事故や故障などのトラブルも増えました。だからといって、もう運転をやめましょうとは誰も言いませんでしたよね。道路の整備をして、故障やレッカーなどのサービスを充実させました。私は宇宙も同じだと思うんです」 衛星の点検に、寿命延長、そしてデブリ除去。岡田が目指すのは宇宙環境を維持するロードサービスだ。宇宙を安全に利用するための環境を整えるには、各国が手を取り合う必要がある。 「私の設定したゴールは2030年。あと9年でデブリの除去、衛星の点検・寿命延長を当たり前にしたい。それらをルーティンにすることで、宇宙が初めて持続可能になるんです」
--- 岡田光信 1973年、兵庫県神戸市生まれ。東京大学農学部卒業後、大蔵省(当時)に入省。金融、IT業界などを経て、2013年に宇宙ゴミ(スペースデブリ)除去・軌道上のサービス提供を目的とした宇宙ベンチャー「アストロスケール(Astroscale)」を創業。Forbes JAPANが選ぶ「日本の起業家ランキング2019」第1位。アストロスケールのビジネスモデルは、ハーバード・ビジネス・スクールの教材に2回選出された。著書に『宇宙起業家』『愚直に、考え抜く。 世界一厄介な問題を解決する思考法』。 キンマサタカ 1977年生まれ。大学卒業後にサブカル系出版社に入社し、書籍編集から営業まで幅広く担当する。2015年に編集者として独立。株式会社パンダ舎を設立し、多くの書籍を手がける。ライター・写真家としても活躍し、岩井ジョニ男のインスタをプロデュースしたことで話題に。