29歳女性僧侶がトー横キッズ訪問で感じた時間軸「居場所がない緊張感の中で」生きる子どもに必要な甘え
女子少年院と聞くとやんちゃな子どもが多いイメージでしたが、実際に訪れてみて感じたのは、素直な子が多いということ。みんな熱心に話を聞いていて、授業後のアンケートも丁寧に書いてくれます。回数を重ねるにつれ表情も柔らかくなり、笑顔も見せてくれるようになりました。 そういう子どもたちと接していると、つくづく少年犯罪というのは大人の責任ということを感じます。子どもの環境を大人が変えてあげることが大切なのだと思います。
■子どもが大人に甘えられない状況を変えるべき ── いま社会問題となっている新宿の「トー横キッズ」にも会いにいかれたそうですね。 片岡さん:「トー横キッズと気が合いそう」という声があり、2023年夏に東京に行く用事があったのでそのタイミングで立ち寄りました。私が話したのは女の子のグループだったのですが、同年代の不登校の子どもに比べて、みんな素直で警戒心がなく人当たりがいいんです。私が話しかけると受け入れてくれて、すぐに輪に入れてくれました。
接してみて、「その日」「その時間」という短い時間軸で生きている彼らは、瞬間的に相手と仲良くなることが、そこで生きていくための一種の防衛反応なのではと思いました。そこにいた女の子たちはトー横で知り合った子たちで、その子たちはその輪に入れなかったらもう居場所がないという緊張感のなかで生きています。今日の居場所をつくりたい…だから人当たりがよくて人懐っこいのかなと感じました。 ── そこから何か現在の社会の課題は見えましたか?
片岡さん:トー横にいる子どもだけでなく、学校に通っている子どもたちを見ても、全体的に大人に信頼を持てていないんです。特に問題を起こすような子どもでなくても、学校が楽しいわけではないけれど、保護者や先生を怒らせないために行くという感じで気を使っている。大人がヒステリーを起こさないように、子どもが合わせているんです。 原因のひとつには、大人自身がやりたいことや自分の幸せを求めすぎて、子どもを受け止める余裕がないというのが挙げられると思います。たとえば少し前にSNSで話題になった「#教師のバトンプロジェクト」。SNS上で教師が仕事の現状や問題点、魅力について発信するプロジェクトですが、あれってもちろん子どもも見ることができるんです。そうすると大人の現状を知った子どもたちは、大人に甘えきれなくなってしまう。大人が困らないようにと、子どものほうが大人に気を使う状況が生まれてしまっています。