【毎日書評】メンタル不調を抱える社員がいま後悔していること、やればよかったこと
「もっと早く相談しておけばよかった」という社員
著者がメンタル不調を抱えた人にインタビューした際、多くの方が「もっと早く相談しておけばよかった」との思いを話してくれたのだそうです。そして、その方にも2つの共通点があったのだとか。 一つめは、メンタル不調に陥った際、どこからが病気で、どこまでが健康だったのかが分からなかったという点です。重要な点として挙げたいのは、どこまでを健康な状態として「頑張らなければならなかったのか」と、未だに疑問を持たれている方も多くいらっしゃったという点です。(62ページより) とくに責任感や達成意欲が強い方ほど、自分自身への対応を後回しにする傾向があるようです。その結果、ちょっとモヤモヤするという自覚があったとしても、「まだ大丈夫」「もっとやれる」「がんばりたい」というように、無理して自分を励ますようなかたちで進んでしまうわけです。 そして、どこかの時点で限界点を超えてしまう。つまり、自分では自分の不調に気づけないものなのです。そのため、「もし、もっと早く相談できれば、罹患を防げたかもしれない」ということは往々にしてあるということです。 二つめは、メンタル疾患の「治りにくさ」に罹患して初めて気付くという点です。メンタル疾患に対する治療は、数日で終わるものではなく、数ヶ月、数年に及びます。 また、治療が完了した後も心のどこかにメンタルダウンした際の感覚が残っていて、その感覚と付かず離れず共に過ごしていくことになります。 この過程を多くのメンタル不調者が実感として持っています。誰にでもなる可能性がある病気にも関わらず、その実態を十分に理解しておらず、罹患した後に後悔している、そのような心境を吐露されます。(63ページより) つまり、こうした状況を改善するためには、日ごろから社員に対し、働くうえで必要となる「メンタル不調に関する知識」をインプットし、啓蒙する必要があるのです。(62ページより) 実際の相談者、人事労務担当者、カウンセラーと、それぞれの立場からの実例を豊富に掲載した一冊。 これからの社会に求められる人事労務担当者の姿、そして社員と企業の労使関係のあり方などにも踏み込んでいるため、メンタル不調に悩む社員と向き合う際に大きく役立ってくれそうです。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 日本能率協会マネジメントセンター
印南敦史