ICTやデジタル技術の本質を理解し技術者の誇りを--JISA会長が年頭あいさつ
情報サービス産業協会(JISA)は1月9日、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で、2025年の新年賀詞交歓会を開催した。会場には会員企業や業界関係者など約500人が出席した。 会長の福永哲弥氏(SCSK 参与シニアフェロー)は、「デジタル時代は、個人が主役の時代でもある。デジタル技術で『人が輝く社会』を創ることがJISAのビジョンステートメント。先端デジタル技術で個人をエンパワーし、高度デジタル人材としての能力を開発していく必要がある。また、予測不能の時代と言われるように、厳しく難しい社会環境だからこそ、デジタル産業において個人が持てる能力を思う存分発揮し、価値創造を行い、それにふさわしい対価を得られる環境整備にJISAは力を注いでいく」とあいさつした。 福永氏は、「新年に家内と就職活動をした数十年前の思い出話をした」というエピソードを紹介した。 「情報サービス産業企業への就職活動で家内がOGを訪問した際に、『あなたのような文系の人が来るところではない。ICTをなんだと思っているのか』と言われたそうだ。これを聞き私は、この先輩がICTの本質を正しく理解していないとともに、技術者として強い自負を持っている素晴らしさを感じた。既存技術の進化や生成AIをはじめとする先端技術に対応しなくてはならない。また、情報サービス産業の企業は、個人の技術探求をもとにさまざまな社会課題の解決を実現し、安心・安全な社会の確立を目指すことになる。そのためには、ICTやデジタル技術の本質を正しく理解し、技術者としての誇りを持つことが大切だ。JISAは、日本においてできるだけ多くの誇りあるICT技術者、高度デジタル人材を育てるべく努力を続けていく」(福永氏) さらに、JISAは2024年に設立40周年を迎え、24の国・地域の業界団体が参加するASOCIOによる「ASOCIO Digital Summit 2024」を日本で開催した。福永氏は、「生成AIが日本の産業にとって国際競争のゲームチェンジャーになると捉え、2024年10月末には『生成AI技術の社会的活用にかかる提言』を行った。JISA会員企業の人材をはじめとしたICT人材、デジタル人材が能力を発揮し、技術者としての誇りを持って安心・安全なデジタル社会の確立に邁進し、人が輝く社会の創生を目指していきたい。力を合わせてこの産業の企業で働く人々、日本全体を盛り上げていこう」とも呼びかけた。 来賓を代表してあいさつした経済産業省 経済産業大臣政務官の竹内真二氏は、2024年が自然災害に見舞われた1年だったとした一方で、30年ぶりの高水準の賃上げや設備投資、史上最高水準の株価、名目の国内総生産(GDP)で600兆円を超えるなど、「日本経済にとっては明るいニュースを耳にした1年でもあった。しかし、消費の力強さを欠いており、賃上げも地域や業界によってばらつきがある。地域の中堅・中小企業を含めて継続的な賃上げを実現し、好循環を定着させることができるかどうかが2025年の正念場だ。総合経済対策や補正予算を総動員して前向きな流れをしっかりと継続、拡大していく。JISA会員各社には賃上げや設備投資、価格転嫁などの面で積極的な取り組みをお願いしたい」と述べた。 また、「米国で新政権が誕生する。強固な経済関係は、二国間関係の土台を成すもの。日本の国益に資する形で日米の経済関係を一層発展させていきたい。2024年はDX(デジタル変革)やGX(グリーン変革)に対する新たな政策展開を打ち出した。中でも半導体は、2030年度までに10兆円以上の公的支援を行う新しい枠組みである『AI・半導体産業基盤強化フレーム』を策定した。半導体はあらゆる産業を支える基盤になる。この枠組みを最大限活用して生成AI活用や半導体供給体制を強固なものにしていく。2024年秋には、『第7次エネルギー基本計画』と『GX2040ビジョン』も打ち出した。DXやGXの進展に伴い電力需要が増加する中で、脱炭素電源の確保が国力を大きく左右する。脱炭素電源を新たな産業作りの起爆剤にする。新しい方針のもとで具体的な進展を1つでも多く示していきたい」とも語った。 さらには、「生成AIは新たな価値を創造し、社会を豊かにするチャンスをもたらす。日本は人口減少の影響で生産性向上に対する特別なニーズがある。AIのポテンシャルを最大限に引き出し、高い競争力を持つサービスを開発し、活用を促進してイノベーションを創出することが重要。経済産業省では計算資源の調達支援にとどまらずデータの活用促進に向けた仕組みを構築するとともに、計算資源の高度化やエネルギー施策と連動させることで、AIの開発競争力の強化に取り組む。JISAは、デジタル技術の社会実装を通じて、日本のDXをけん引してきた。生成AIによる変革の時代にもJISA会員会社が蓄積してきた経験やノウハウを活用してもらうことで、リーダーシップを発揮してもらいたい」などとした。 乾杯の音頭をとったJISA 副会長の舩越真樹氏(IDホールディングス社長)は、「久しぶりに500人が参加する新年賀詞交歓会になったが、今日は一切ざわつくことがなく、あいさつをじっくりと聞いてもらった」と語り、「さまざまなことがある1年になるだろうが良い年となるようにしたい。乾杯は大声を上げてほしい」として会場を沸かせた。