「会話が絶え絶えになるほど」歯が痛くても半年以上放置、1Kの部屋はゴミ屋敷レベルに…要介護の母(79)の家に足を運ばなくなったワケ
この要望を受け入れると、身体と心と生活に空いた穴を子供たちで埋めることを求める母と、その道の専門家に頼る選択肢を諦めた筆者と姉の間で共依存が生じて、次第に冷静な判断ができなくなっていく恐れがある。私にも姉にも家族がいて仕事がある。身の回りにある様々な大切なものにバランスよくエネルギーを注ぐ視点を保てないと、長期的に支えることは相当難しいと思える。 それを母に何度説明しても表面的に首肯するだけで、本音のところは揺るがないようだった。母に変化を求める子供たちと、あくまで子供たちの手で支えることを求める母。このままでは互いの期待が強く衝突して良い結果につながらない。そう考えた筆者と姉は話し合い、母の家に足を運ばなくなった。
主たる介護者には絶対ならない
あれ以来、こちらから母に電話したり様子をみたりすることは一切なくなった。ケアマネジャーさんやヘルパーさんなどの介護のプロから連絡を受けて、必要に応じて動く姿勢を徹底している。 介護サービスの申請書類では、「主たる介護者」「主な介護者」という項目をよく見かける。介護サービスを受ける人に対して、介護を担う家族等の中心人物を記載する項目だ。ここは常に空欄にしている。 一方で、福祉サービスの連絡窓口となる人物を記載する「キーパーソン」という項目も見かける。筆者の名前を記載するのはこちらだ。会社員の姉よりも自由に動けて、自宅も近いから、キーパーソンになることは問題ない。けれど、共依存の沼はいまでも怖い。そうして、母子で期待の応酬をする接触を避けてプロに介護を委ねるために動くという、現在の「見捨てず、背負わない」のスタンスに落ち着いた。 8年前に母の病院通いに付き添ったとき、医療スタッフから「なぜ息子さんと一緒に暮らさないのですか?」と言われて、非難されたように感じたことをいまでも覚えている。しかし、ここ最近は公共サービスにおいてそんな圧力を感じたことはない。 おそらくは親を見捨てずに背負わない、こうしたスタンスを受け入れてもらえる空気は世の中に広がってきている。キーパーソンとして母の介護に関連する手続きに動くたびにそう感じる。個々のエピソードは別の機会に譲るとして、似た境遇に悩む人がいたら筆者のような選択肢もあると知ってもらえたら幸いだ。 銀行登録印はどれだ? 見つかった印鑑は8本、母(79)は「覚えていない」と言う…親の介護で遭遇した“資産管理問題”を乗り越えた方法は へ続く
古田 雄介
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