進む「生成AIと家電の融合」欧州最大のエレクトロニクスショーで見た最先端
生成AIと連携するスマート家電が早くも登場
■生成AIと連携するスマート家電が早くも登場 「生成AIとスマート家電の融合」はまだ始まったばかりだが、今年はIFAでその最前線に触れることができた。 LGエレクトロニクスは欧州でも人気の生活家電メーカーだ。同社は独自の大規模言語モデル(LLM)をベースに開発した最新のAIエンジン「FURON(フューロン)」を組み込むスマートホームハブ「ThinQ ON」を商品化する。 ThinQ ONはコースター程度の大きさの家電。LGが推進してきたスマートホームのプラットフォームであるThinQ(シンキュー)をサポートする生活家電にホームネットワーク経由で接続して、これらを「生成AI対応の家電」に変えるユニークなAI対応の司令塔だ。ユーザーの生活リズムをAIが学習して、家電の連携動作により心地よい暮らしをサポートするルーチンプログラムを生成したり、Microsoft Azureをベースに開発するAIチャットボット機能などを組み込む。年内に韓国から商品として販売を開始する。 欧州ではサムスン電子の生活家電も強い。IFAに最大規模のブースを出展するサムスンは、大型ディスプレイ付きスマート冷蔵庫の「壁紙画像」を生成AIがつくり出す機能を今年の新製品から投入した。先にスマートフォンのGalaxyシリーズで実現している生成AIベースのチャットや、食事の献立提案などキッチンに最適化した生成AIサービスを冷蔵庫でも近く実現したいと、同社の家電担当のスタッフが展望を語っていた。来年には独自のAIアシスタント「Bixby(ビグスビー)」と会話しながら操作できるスマート冷蔵庫が誕生しそうだ。
家庭用も目指す、ドイツの人型ロボット
■家庭用も目指す、ドイツの人型ロボット IFAには毎年「IFA NEXT」というスタートアップが中心に集まる特別展示エリアが設けられる。2024年には世界40カ国以上から350を超える出展社が集まった。各企業がここに出展する大きな狙いは、IFAに集まる世界のトレードビジターとのコネクションを築くためでもある。筆者が日本から足を運んだ記者であることを知った途端、「日本に進出したいが、いいディストリビューターを紹介してほしい」と熱烈にアピールしてくれる出展社が今年は特に多かった。 ドイツ南西部のシュトゥットガルトに拠点を置くNEURA Roboticsは、AI機能を搭載する産業向け協働ロボットのエキスパートだ。同社がIFA NEXTに出展したヒューマノイド・ロボット「4NE-1」がひときわ強く耳目を集めていた。 同社は4NE-1を産業向けにだけでなく、お手伝いロボットとして一般の家庭向けにも2025年から商品として提供することを目指している。会場のデモンストレーションではロボットがユーザーと音声でコミュニケーションを交わす様子しか見られなかったが、同社のスタッフによると「導入するソフトウェア次第で、アイロンがけや洗濯などロボットに家事を任せることもできる」という。 IFA NEXTは2019年から「パートナー国」として提携した地域のスタートアップにスポットを当てるプログラムを実施している。2019年の最初のパートナー国は日本だった。今年のパートナー国である韓国からは多くのスタートアップがIFA NEXTに出展した。 Entwickは韓国・龍仁市に拠点を置くスタートアップ。欧州でも関心を呼ぶデジタルヘルステックのデバイスとサービスを得意とする。同社が医療機器開発の知見に基づいて開発した「ArthronPulse」はアスリートの膝関節治療を目的としたウェアラブルデバイス。膝関節を覆うように装着するデバイスが超低周波磁界を発生させて炎症を抑制、細胞や軟骨の修復を促進する。薄毛治療のためのウェアラブルデバイス「HairoPulse」、深部静脈血栓症の治療を目的とした「EVeinPulse」などユニークな製品も手がける。