「選手権は僕にとって特別な大会」前橋育英のオノノジュ慶吏が育むエースとしての自覚と自信「痛いなんて言っていられない」
無心になることの大切さに気づく
「正直、選手権まで僕はどこかプレーで消極的な部分があったのですが、あの選手権の舞台で2ゴールを決めてからは、『自分はストライカーなんだ』という自覚が芽生えたというか、自分が点を決めるんだという気持ちが強くなりました」 点を取ることこそ自分の仕事であり、責務である。憧れていた大舞台で無我夢中でプレーして結果が出たことにより、自覚と自信が芽生えた。 もっとも、それが結果として表われるのには時間がかかり、今年のプレミア初ゴールは第7節の横浜FCユース戦だった。だが、このゴールで「自分が点を決める時は、何も考えないでやっていることが多い。深く考えている時は外すことが多いのですが、流れの中で瞬間的に自分が練習を積み重ねてきたことを出せた時に点が生まれている。それに改めて気づいた」と、無心になることの大切さに気づいた彼は、ここから量産態勢に入った。 「選手権の厳しさを痛感したからこそ、僕らの代である今年は去年より活躍をして、結果も大きく越えていきたい。だからこそ、県予選は負けたら終わってしまうので、もう痛いなんて言っていられないんです」 3年間で大きな成長を遂げたオノノジュにとって、選手権はより特別な場所となった。もちろん無理は禁物だが、彼の熱い思いは十分に伝わってくる。9日の共愛学園との決勝戦に向けて、オノノジュは自分の出番が来た時に獰猛な牙をむき出しにするべく、仲間を信じ、かつ飢えに飢えてその時を心待ちにしている。 取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)