<上海だより>少数派の文化系若年層、「文芸青年」とは?
前回は中国のイマドキ女性に定番の「小清新」について紹介しましたが、若者のスタイルを指し示す他のキーワードの一つとして、「文芸青年」(以下、「文青」)という言葉があります。本来の意味では、読んで字のごとく読書や映画など文芸を好む若者、という意味で使われていましたが、近年ではある特定の傾向を持つ若者層を指し示す言葉としても使われ始めています。
一説ではありますが,中国で文青とは1990年代以降からプチ・ブルジョワ階級を示していた「小資」の派生として生まれたカテゴリーとも考えられています。小資は生活にゆとりが出たことで、生活の質や品位を追求するやや高級志向な人たちという漠然とした意味で使われていましたが、おおよそ2010年代に入ってからさらに具体的な趣味傾向を持った若者たちを文青と呼ぶことが多くなっています。
文青の趣味は極めて限定的であり、本質的にサブカルチャーかつ、硬派です。大まかな指向性として、マイノリティであること、個性的であること、が重要視されています。例えば、大手の会社に所属しないインディーズ音楽や職人による手作り(風)の雑貨、流行よりもレトロで味のあるアイテム、というような趣味傾向を持っています。一般的かつ商業ベースの代表例を挙げると、日本の無印良品も好まれますし、日本でも一定の支持を得ているアメリカ・ポートランド発のライフスタイル雑誌「キンフォーク」なども重要な媒体です。
無印良品やキンフォーク、という雰囲気から考えると、文青の好みはこれまでの中国人の一般的なギラギラとした趣味傾向や、小清新の萌え萌えな雰囲気とはかなり異なるといえます。無駄を削ぎ落としたシンプルスタイル、それが一つの美学となっているようです。小清新を紹介した際にも字体に触れましたが、文青的な雰囲気に共通するのが明朝体系のすっきりとした字体です。デザイン的には、ややスクラッチを効かせたような、ざらついた質感を持たせレトロ感を強調している場合もあります。また、大陸で使われる簡体字ではなく、台湾や香港などの繁体字を使うことも重要なデザインの要素です。さらには、台湾の流行からの影響が色濃いですが、錆びた鉄や光沢のない金属に文字の形の穴を開けて、後ろから照明を当てるようなスタイルもよく見られる特徴です。