今よみがえる伝説の経済学者「宇沢弘文」、21世紀の経済学者の課題「社会的共通資本」とは
社会的共通資本理論の特徴は、ダスグプタの理論などと比べても「強い持続可能性」を求めていることだ。宇沢の原点が、水俣病などの深刻な公害にあったことが関係している。公害研究では宇沢の同志で、環境経済学者の草分けである宮本憲一は述べている。「環境を経済学の中にすべて包摂できるものでなく、反対に、もし環境学が創造されるとすれば、経済はその中に内包されるものであろう」(『環境経済学』岩波書店)。 宇沢が構築しようとしたのは環境学であり、それは21世紀の経済学が進むべき方向を指し示していた。環境学の目的は、環境だけを大事にすることではない。「ゆたかな社会」について、宇沢が説いている。
「すべての人々の人間的尊厳と魂の自立が守られ、市民の基本的権利が最大限に確保できるという、本来的な意味でのリベラリズムの理想が実現される社会である」。 「ゆたかな社会」を実現するために、社会的共通資本を中心とした制度主義の考え方を、宇沢は提唱したのだった。 「宇沢弘文没後10年シンポジウム」(2024年8月24日開催)のプログラム ① 「社会的共通資本理論の再検討」 浅子和美(一橋大学名誉教授)×宮川努(学習院大学教授)
② 「宇沢弘文の数学」 安田洋祐(大阪大学教授)×小島寛之(帝京大学特任教授) ③ 「『定常型社会』と『資本主義の新しい形』」 広井良典(京都大学教授)×諸富徹(京都大学教授)×松下和夫(京都大学名誉教授) ④ 「21世紀のコモンズ論」 三俣学(同志社大学教授)×茂木愛一郎(元日本開発銀行) ⑤ 「宇沢弘文追悼ビデオメッセージ」の上映 (2014年11月の「お別れ会」で上映された映像。出演はケネス・アロー、ロバート・ソロー、ジョセフ・スティグリッツ、ジョージ・アカロフ)
⑥ 「宇沢弘文とマクロ経済学」 清滝信宏(プリンストン大学教授)
佐々木 実 :ジャーナリスト