気象データは「宝の山」か(上) 「未来予測」活用に動く民間企業
生活をしていくうえで誰もが無関係ではいられない気象情報。スマートフォンやテレビなどでその日の気温や降水確率をチェックし、服装や傘の有無、レジャーの計画などを決める人も多いだろう。しかし、最近、それだけでなく、気象のデータを活用し、商品の売り上げアップなどを図ろうとする取り組みを進める民間企業が増え始めているようだ。 こうした民間企業の実情や、気象データの利用拡大に向けた気象庁の取り組みについて、2回にわたってレポートする。
天気に応じた好みのコーディネートをアドバイス
「天気予報は確度の高い未来予測。これを活用しない手はないと考えました」。こう話すのは、東京都渋谷区に本拠を置く「ルグラン」の代表取締役、泉浩人さん(54)だ。 ルグランは、気象データを活用して、女性に天気や気温の変化に合わせたコーディネートを薦めるTNQL(テンキュール)というサービスを提供している。ただ単にコーディネートをアドバイスするだけでなく、毎日の服装を記録していけば、その人の好みをAIが学習し、天候と好みを踏まえたスタイルまで提案してくれる便利なサービスだ。 ルグランの主業務は、ビッグデータを分析したり、デジタルマーケティングを行ったりするコンサルティング。気象情報会社から、気象データの有効活用を相談された同社は、顧客のアパレル業界に気象データと顧客・販売データを組み合わせることで、売上拡大が図れるのではないかと思いつく。しかし、アパレル業界は興味を持つものの、いざシステム開発となると、その手間などが重荷となり、二の足を踏んでしまうことが多かった。 「ただ、我々としては気象データを活用するということに大きな可能性を感じていました。であれば、いっそのこと、自分たちで仕組みを作ってしまったらいいと考えました」。そして、出来上がったのがTNQLだ。試験的に、ある出版社のWEBページのウィジェットとしてTNQLを組み込んだところ、リピートユーザーが生まれることも確認でき、同ページのPV(ページビュー)率も約3カ月で2倍に増加。ECサイトとの連携など、新たな展開が次々と生まれ始めている。