気象データは「宝の山」か(上) 「未来予測」活用に動く民間企業
「日本はまだまだ気象データ活用が進んでいない」
またほかにも、自動車保険会社と協力して過去の事故データと天候の関係を調べて「ドライブ注意報」のようなものを出すことや、デジタルサイネージ(電子看板)に気象データを生かした商品の広告を載せる提案など、気象データを活用方法拡大に向け取り組んでいる。 各データを分析に活用している企業等の割合を示した総務省の平成27年度情報通信白書によると、顧客データ46.7%、経理データ45.6%などに対し、気象データは1.3%にとどまる。泉さんは、「アメリカの気象情報会社の推計によると、気象データ活用による日本での経済効果は約18兆円だという。日本はまだまだこうした動きが進んでいない」と指摘する。
最先端のコインランドリーシステム
東日本大震災で広い範囲で液状化被害が発生した千葉県浦安市。同市で不動産業を営む高梨健太郎さん(45)は、住民の流出や不動産価格の下落に頭を悩ませながら、新規事業立ち上げの必要性を感じていた。そこで目を付けたのがコインランドリー事業。高梨さんは震災から2年後に株式会社「wash-plus(ウォッシュプラス)」を設立した。 といっても、空いた土地に導入し、店舗を運営する従来型の事業ではなく、目指したのは「コインランドリー業界のプラットフォームを作ること」。そのために、コインランドリーメーカーと協力して開発したのが、IoT技術を搭載した洗濯乾燥機システム「smart laundry(スマートランドリー)」だ。スマートランドリーは、店舗を集中管理できるシステムで、これを用いることでオーナーは設置してある洗濯機・乾燥機の稼働状況、故障状況や売上などのデータを把握できるようになり、それを基に経営戦略を練ることができる。また、ユーザーはスマートフォンで洗濯機・乾燥機を操作することができ、支払いも「コインレス」で行え、洗濯の終了の連絡なども受けられる。 このシステムを基に、ウォッシュプラスは業容を拡大させているが、今、このシステムに新たに加えようとしているのが「気象データ」だ。高梨さんは「コインランドリーは雨が続けば売上が増え、反対に、雨が少ないとお客さんが途端に来なくなる。これだけ天気に影響される業種なのに、これまで業界としてはそのデータを経営に活用してこなかった」と語る。