病院が研修医採用に日本初の“実技試験”を導入、その狙いとは?
夏に入り、学生の新卒採用試験がピークを迎えていますが、ほとんどの企業では書類選考、筆記試験、面接試験という3種類の選考で内定者を決定しているのではないでしょうか。一方、7月19日には医師(研修医)の採用試験で、一風変わった“実技試験”の有効性を検証するトライアウトが行われました。 研修医希望学生を対象に東京ビッグサイトで開催された合同説明会「レジナビフェア」の会場でこのトライアウトを実施したのは、岡山県の倉敷中央病院。医学部の卒業予定者を対象にした研修医の採用でも、一般的に試験は書類選考、筆記試験、面接試験の3種類ですが、倉敷中央病院はこれに実技試験を加え、医師として求められる基礎能力を深く試そうという試みを取り入れたのです。
ただ、試験で学生に本物の患者さんを治療させるわけにはいきません。医師採用試験で行われる実技試験とはどのようなものなのでしょうか。今回行われたトライアウトで実施された実技試験では、「約5mmの折り鶴を15mm平方の折り紙を用いて何羽つくれるか」、「約35mm前後のタマムシを13の部分に分解したものを、もとの形に組み立て直せるか」、「約5mm程度のひと粒の米の上に極小の刺身を載せた寿司を何貫つくれるか」という3つの課題が出され、30名の参加者が挑戦。参加者たちは医療用の手袋をして、用意されたピンセットやメス、鉗子などを使って課題に挑みました。 特に苦戦していたのは寿司と折鶴を作る課題で、指先ほどの大きさの魚や折り紙を使ってミスのない正確な作業をするという課題に、機器を扱う器用さ以上に指先一点だけに集中して途中でその集中を切らさない強い精神力が試されている様子でした。
この試験には、参考データをとるために倉敷中央病院の現役研修医も参加。試験という緊張感が漂う雰囲気やこれまで経験のない課題内容ということもあり、研修医でも課題を完成できない人がいるほどの難関試験になったようです。倉敷中央病院によると、ひと粒の米で極小の寿司を作る課題は、研修医が11貫完成のところ、学生は最高で8貫を完成。約5mmの折り鶴を作る課題は、学生2人が3つ完成させたところ、研修医はひとりも完成に至らなかったとのこと。参加した学生のひとりは、「ものすごく緊張したが実際に医療の現場では、もっと緊張するミスが許されない状況になるので良い体験ができた」と感想を語っています。