グーグルからの「Chrome」切り離しが複雑で困難な理由
マイクロソフト、メタ、アップル。どの企業にも買収にあたり問題がある
グーグルがChromeの売却を強制された場合、このデータの管理権は誰に渡るのかという問題が浮上する。ブラウザ間で一部のデータを移行するのは比較的簡単ではあるものの、新たなオーナーの支配下にあるブラウザをイチから使用する場合、ユーザーは大きな混乱に直面することになる。 ログインプロセスもまた課題になる。現状では、Googleアカウントを使ってChromeにログインすることが可能だが、新たなオーナーの下ではそれが許されなくなると考えられる。その場合、ユーザーは新しいアカウントを作成する必要があり、それによる手間や混乱、不正行為の可能性が生じることになる。 ■Chromeを買収するのは誰か? 次に問題となるのが買収者を見つけることだ。数億人のユーザー基盤を獲得できることは非常に魅力的な提案にはなるが、買収コストが非常に高額になる可能性があり、それを支払える企業は限られるだろう。 マイクロソフトは、一見最有力の候補に見える。同社がすでにChromiumベースのブラウザを持っていることを考えればなおさらだ。しかし、マイクロソフトが過去にブラウザに関する競争制限行為で批判を受けた経緯を考えると、承認される可能性は低いだろう。 メタも有力な候補になり得るが、ソーシャルメディア分野での支配的な地位が新たな競争問題を生む可能性がある。また、他のブラウザメーカーはChromeを買収するための十分な動機や資金がないかもしれない。アップルはすでにSafariを所有しており、もしChromeを買収するとなれば、自社の競争力に対するさらなる反競争的な批判に直面する可能性がある。 Firefoxの所有者であるMozilla(モジラ)は、最近30%の人員削減を実施するなどの財政的に厳しい状況にあり、すでにグーグルから多額の資金を受け取っている。他のブラウザメーカーは、ほとんどが小規模な企業であり、Chromeを買収するための資金を調達することは難しいだろう。 これらの課題があるからといって、Chromeをグーグルから分離するべきではないというわけではない。しかし、もし司法省が望むようにそれを実行することになった場合、それが簡単な仕事ではないことは明らかだ。
Barry Collins