グーグルからの「Chrome」切り離しが複雑で困難な理由
米国司法省(DOJ)は、ハイテク大手グーグルによる市場の独占を是正するため、ウェブブラウザChromeの売却を命じるよう裁判所に要請する方針を固めたとブルームバーグが11月18日に報じた。 しかし、Chromeをグーグルの事業から分離することは、簡単なように思えても、実際には多くの複雑な要素が絡んでおり、消費者やブラウザ業界全体に影響を及ぼす可能性がある。このため、この措置の実現は容易ではない。 ここでは、Chromeをグーグルから分離することが難しい理由を説明する。 まず、Chromeが何であるかを明確にする必要がある。Chromeはオープンソースのブラウザエンジンの「Chromium(クロミウム)」をベースに作られたウェブブラウザだ。Chromiumはすべての開発者が利用可能であり、マイクロソフトのEdge(エッジ)やVivaldi(ビバルディ)など、数多くの企業がChromiumベースのブラウザを開発している。これらのブラウザは、Chromeのウェブストアから拡張機能をインストールできるなど、Chromeと多くの機能を共有している。 司法省がグーグルに対してChromiumそのものの売却を強制することはできない。なぜなら、Chromiumはグーグルの所有物ではないからだ。そのため、実際に売却されることになるのはChromeを日常的に使用している何億もの人々のベースであり、ブラウザの基盤テクノロジーそのものではない。 しかし、グーグルとその開発者チームはChromiumのプロジェクトにおける最大の貢献者であり、既存のコードベースの多くを作成し、プロジェクトの方向性を主導してきた。仮にグーグルがブラウザの売却を強制されれば、Chromiumの長期的な将来に不確実性が生じることになる。 グーグルは、この売却の一環として開発者チームの移管を迫られるのだろうか? マイクロソフトなどの新たな貢献者は、グーグルの開発チームが抜けた後の穴を埋める責任を負うことになるのだろうか? だとすればそれはChromiumのプロジェクトの支配権を、ある独占企業から別の独占企業へと移すことに他ならないのではないのか? ■誰がデータを所有しているのか? 現代のウェブブラウザは膨大な個人データを収集している。ブックマークや閲覧履歴、ユーザーとパスワード、大量のキャッシュデータなどのデータは、広告主にとって非常に価値があるものだ。