50年続いた“街の模型店”の思い受け継ぐ新模型店が開業 会社を辞め一念発起…つくる楽しさを多くの人に【山形発】
後継者不足などにより、全国で「街の模型店」が姿を消す中、新たに開業を決意した山形・山辺町の男性がいる。新たな船出を決意した理由は、子どもの頃に感じた「ワクワク感」だった。 【画像を見る】古頭さんが制作した迫力ある戦車のプラモデル
会社を辞め夢だった模型店を開業
11月17日、山辺町の住宅街にプラモデルの専門店「ホビーショップ・ロックモデル」がオープンした。 代表を務める51歳の古頭康弘さんは2024年3月、一念発起して夢だった模型店の開業を決意。長年務めた会社を辞め、自宅の敷地内に店を構えた。 オープンを間近に控えた10月29日、店舗を訪ねると、完成した建物の中では棚や商品を搬入する準備が始まっていた。古頭さんは「ここの真ん中のところにはプラモデルを作るための工具・用具がそろう予定。こちらの棚には塗料が並ぶ」と案内してくれた。 「周囲からびっくりされた」という古頭さん。「『この時代に模型店なんて大丈夫なのか』という話も出たりしたが、みんな応援してくれる人が多いのでありがたく思っている」と話す。 小学生の頃からプラモデル作りに夢中だった古頭さんは、オンラインゲームなど趣味の多様化や、大手ネット通販などの影響で県内でも模型店が次々と廃業していく中、少年時代に心を躍らせていた場所が消えていくことに寂しさを感じていた。 古頭さんは「子どものころは、山形市内とかそれ以外のところにもたくさんあった。自分たちが子どものころに通った店が心に残っているので、こういう店が山形からなくなることが寂しいことなので自分がやろうと思って」と胸中を語った。
“老舗模型店”の歴史を受け継ぎ…
10月28日、多くの子どもたちに親しまれてきた寒河江市の模型店「ノブ科学模型社」が、50年の歴史に幕を下ろした。 街の模型店として、市の内外から多くの客が訪れ親しまれていたが、社長の小関正吉さんは2021年から耳が聞こえにくくなり、後継者もいないことから廃業を決めた。 75歳の小関社長は「いろいろなブームがあった。スーパーカーブーム、ミニ四駆ブーム、ガンダムブーム、いろいろあった」と振り返った。そして「寂しさはない。かえってうれしい。肩の荷が下りた。古頭さんがやってくれるので」と語った。 閉店した翌日、店には片づけを手伝う古頭さんの姿があった。 店内に所狭しと並べられたプラモデルの山。箱を開けて、パーツを見ながらどう作ろうかと心躍らせた思い出。 古頭さんが客として訪れた2023年夏、小関社長から「そろそろ店を閉めたい」と打ち明けられ、その瞬間、「誰かに店を続けてほしい」ではなく、「自分がやるしかない」と決意したという。 古頭さんは「1時間も2時間もいろんなプラモデルを眺めながらどれを買おうか、どれを作ろうか悩んでいる時間がとにかく楽しかった。インターネットでも買える時代になっているけれども、こういうのが良くて無くしちゃいけないという思いから自分で店を受け継ぐというか、こういう店の業態を続けていきたい」と話す。 古頭さんは、小関社長が大切に使い続けて来たガラスケースや在庫の商品を買い取らせてもらい、新たな場所で「街の模型店」の歴史を受け継いでいく。 小関社長は「うちは後継者がいないので、古頭さんが後継者としてやってくれるといったのでうれしく思った。(商品には)愛着があります。やっぱり50年という長きにわたってやってきたので、一つ一つ吟味して仕入れたので愛着がありますね」と思いを語った。