【海外トピックス】目が離せなくなったアメリカ大統領選。自動車産業への影響はどうか
米国は強大化した「トランプ2.0」を鎮められるか
前掲書は、アメリカ保守思想の変遷を政治史とともに解説していますが、トランプ(ゴジラ)を産んだ没落した労働者階級は、「自分以外の全てのせいにする」傾向があるのも確かです。エリート支配層を嫌い、莫大な富を蓄えるウォール街を嫌い(この動きは10年前に起こった学生や左派によるオキュパイウオールストリート運動と共振する)、黒人やマイノリティーの権利ばかり持ち上げるリベラル思想を嫌い、いわば現在の社会制度をなす自分以外に敵意が向かっており、SNSなどによって「トランプ2.0」のようなポピュリズムが増幅していると言えるでしょう。 現政権の民主党は、この憤懣のエネルギーを解消する有効な手段を打ち出せるかどうか。奨学金の負債を免除したり、富裕層に課税し中間層を減税すると言っても、その声はゴジラには容易に届きません。しばらくの間、世界はアメリカで勢いを増すトランプ旋風の一挙種一投足に振り回されることになりそうです。(了) ●著者プロフィール 丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。