【海外トピックス】目が離せなくなったアメリカ大統領選。自動車産業への影響はどうか
ハリス氏ならバイデン政策の踏襲
一方のハリス氏ですが、わずか2日間で民主党内を自分への支持で固めた手腕にはメディアも一目置いているようです。バイデン大統領から後継指名の連絡を受けてから10時間で100本の電話をかけまくり、元大統領のクリントン夫妻や民主党議会関係者、出馬の噂もあったカリフォルニア州やミシガン州の知事などの支持表明を勝ち取り流れを引き寄せた事実は、同氏の若さと行動力を強く印象づけました。 そのハリス氏の政策は基本的にはバイデン大統領のそれを引き継ぐと予想されています。IRAなどの温暖化対策やEVシフトの手を大きく緩めることはないでしょう。自動車メーカー各社も、EPAやCAFEの規制案の緩和要求が受け入れられた矢先であり、今後の市場の進捗によってはさらにEVシフトのスローダウンする可能性はありますが、基本的にクルマの電動化の方針は揺らいでいません。
合衆国の分断は容易に癒やされない
銃撃事件後、トランプ氏有利に傾いたと思われた選挙戦ですが、ハリス氏の敏捷な動きによって今後、支持率の差はさらに縮まると予想され、スイングステート7州を巡って激しい選挙戦が展開されるでしょう。環境政策だけでなく、ウクライナ戦争を即座に終結させてみせると言うトランプ氏は、武器支援を減らし、欧州連合との距離を取るでしょう。遠い外国に深く関与するのではなく、「アメリカ・ファースト」に回帰してくれという労働者層、没落した中間層の声が、リベラル思想を奉ずる裕福で教育あるエリート層の理想主義を上回る可能性は十分にあります。 アメリカの分断は、主要都市のEV購入比率を見ても明らかです。 ニューヨークタイムズ紙に引用されたS&Pグローバルモビリティの調査によれば、カリフォルニア州サンフランシスコ市やシリコンバレーでは30%を優に超えており、ロサンゼルスやシアトルで20%台半ば、デンバーやフェニックス(アリゾナ)、首都ワシントンで10%半ば、アトランタやニューヨーク、ボストンでは10%前後と高いのに対し、デトロイトやクリーブランド(オハイオ)、ビッツバーグ(ペンシルベニア)では3%程度に過ぎません。走行距離も長くインフラも不十分なこれらの地域に暮らす人々がEVへの乗り換えを躊躇するのは想像に難くなく、個人主義の強い米国では、EV購入を国が強制すれば強い反発が予想されます(実際にはEPAの法律はCO2排出量を規制するもので、EV購入率を強制してはいない)。