検察のエースが部下の女性に…「泊っていけ」と言われた編集者が体感した性暴力の構造
「お前は疲れているんだから泊まっていけ」
そしてすっかり酔っ払ったA氏と事務所に戻り、資料を持って帰ろうとすると「お前は疲れているんだから泊まっていけ」と言われました。 「お気遣いありがとうございます。でも家はそんなに遠くありませんから帰ります」と靴を履こうとします。すると、「人の厚意をなんだと思ってるんだ! 企画がどうなってもいいのか!」と怒鳴られたのです。 いま、もしそう言われた後輩がいたら、「企画なんてどうなってもいいから自分の身の安全を最優先にして」と伝えることでしょう。しかし立場が上の人から「上司の企画がどうなってもいいのか」と言われて、強引に帰ることができる人は少ないのではないでしょうか。 当時は携帯電話もガラケーで、LINEどころかSNSもない時代。誰かにSOSを出すにも、その手段がありません。どうすればいい、どうしたらいい。考えている間に、A氏が布団を敷いたのでした。 どうすればいい。 どうしたらいい。 お酒をたくさん飲んでいたけれど、酔うどころか、頭の中でそんな思いがグルグル回っていました。
「お母さん、私」
とにかくもう少し飲みませんかと焼酎をコップに注ぎ、自宅から通っているので帰りがあまりに遅いと親が心配する、自宅に電話をかけさせてほしいと頼みました。 そして、休みをとっている上司の携帯にかけ、つながりますようにと祈りながらコールの音を聞きました。 「あれ、どうしたの、何か問題あった?」 上司の声を聞いてどれだけホッとしたことでしょう。 「お母さん、私」と言うと、上司は「え?」と戸惑います。 ”今日上司の代わりに夕方打ち合わせに来たのだけど、実はまだそこにいるの。わたしが疲れているから泊まっていけとおっしゃるんだよ。だから帰らなくても心配しないで” そのような内容を、母に伝えるような口調で言うと、「え、まだ○○さんのところにいるの? 泊まる? ちょっと待って」と、私からのメッセージの意味を理解してくれたのがわかりました。 これで大丈夫。なにかあったら、きっと上司がなんとかしてくれる(上司は筆者からの電話を受け、深夜でも事務所に向かってくれたそうです)。 それで冷静になり、もはやお酒を飲ませて寝かせるしかないと決意。親にお酒に強い身体に産んでくれてありがとうと感謝しながら、お酌をしまくる作戦に出ました。そしてA氏が寝てしまったところで、急ぎ事務所を後にしたのです。