DV男から逃げた19歳女性、“所持金数百円”で「生活保護」申請も…社会復帰への「一歩」を踏み出すまでに味わった「困難」とは【行政書士解説】
社会復帰に向けまずは安定、安心して生活できる環境を確保
そして5日後、保護決定と同日に、カスミさんは役所の窓口で1か月分の保護費を受け取ることができました。 家主さんに未払いだった当月分家賃を「住宅扶助費」より支払い、行政書士が上述の通り調査期間中の食費として貸したお金を「生活扶助費」より清算してもらいました。 こうしてカスミさんは、無事に生活保護を受けて、DV 男性からも離れ、居場所を知られないよう手続きも行い、社会復帰に向けまずは安定、安心して生活できる環境を確保できたのです。
カスミさんのケースはすべての人にとって“他人事”ではない
今回、カスミさんのケースを紹介したのは、生活保護を真に必要としている人であっても、申請に至るまでのハードルが厳然と存在しているという実態を、少しでも多くの人に知って欲しいからです。 悲しいことですが、いったん社会のレールから外れた人、身元保証すらなく路頭に迷っている人に対し、日本社会は厳しいといわざるを得ないのです。 カスミさんは、わずか14歳で家を出て、学校へも行かず、いわば社会のレールから外れた暮らしをしていました。私はカスミさんが家を出た理由・背景を知りません。しかし、14歳という年齢で、生計を立てる手段すらないのに家を出るには、よほどの事情があったに違いないと容易に想像できます。 また、「よほどの事情」は、形こそ違えど、長い人生においては誰にも生じる可能性があるものです。 残念ながら、とかく「自己責任」を強調し、あたかも生活保護を受給することが悪であるかのようにあげつらう風潮が、まだまだ一部に根強くあります。また、時折心ない「生活保護バッシング」が巻き起こることがあります。 しかし、自分の「生存権」が脅かされていると思うほど困っているときは、一人で悩み苦しまず、堂々と生活保護の制度を頼っていいのだということを、もっと多くの人に知って欲しいと思います。
三木 ひとみ
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