DV男から逃げた19歳女性、“所持金数百円”で「生活保護」申請も…社会復帰への「一歩」を踏み出すまでに味わった「困難」とは【行政書士解説】
役所は全く相手にせず、警察に通報され、親にも見放され…
素直なカスミさんは、行政書士の私に言われた通りに、すぐに役所に行って生活保護申請をしたいと伝えました。ところが、役所では全く相手にしてくれなかったと言います。 自力で3時間にわたり交渉したそうです。若いのに立派なものです。…というより、本当に困っていたからです。 最後には、役所の通報で呼ばれた警察官が来て、警察署へ連れて行かれたうえ、警察でも役所にした同じ話を繰り返し、「とても疲れました」と言っていました。 警察官には「親に連絡はしないでほしい」と伝えたものの、「未成年者だから親に連絡しなければいけない」と説得され、しぶしぶ親の連絡先を伝えました。でも、親御さんは、警察からの電話に対し「出て行った子のことは知らない、引き取りに行けない」とあっさり断ったそうです。
行き先も確保しないまま「帰っていいよ」と警察
予想外の親の対応に困った警察は、なんと驚くことに、カスミさんの行き先も確保しないまま、「警察署を出て帰っていいよ」と伝えたそうです。 どこに帰れと言うのでしょう?男と暮らしていた家に帰れば、逃げ出したことを咎められ、前にも増してひどいDVを受けることは目に見えています。大阪には身寄りもありません。 所持金が数百円では、どこかに泊まることもできず、路上で過ごすほかありません。 困ったカスミさんは、私に連絡するしかなく、私は警察とも電話を代わってもらい話をしましたが、結論は出ません。なんとも無責任なたらい回しでした。
まずは住宅を確保。善意の家主さんのはからいで
私は急きょ、カスミさんのいる駅で待ち合わせをして、駆けつけました。この時、カスミさんと初めて対面しました。髪をピンクと黄緑色に染めピアスを付けた若い女の子がにっこりとほほ笑んでくれました。 「どこでもいいから、行政書士さんの紹介する部屋に1人で住んで、そこで生活保護を受けたいです。料理は得意で自炊はできます。掃除も洗濯も、ずっと一緒に住む男性宅でやっていたので、家事は得意です」と言うのです。 しかし、何一つ身元保証のない無職無収入のカスミさんです。 そこで、知り合いの家主さんに連絡をしたところ、その方の好意で、カスミさんに部屋を貸してくれることになったのです。 社会は善意の輪で成り立っていると実感しました。 賃貸契約を交わして、初期費用は免除、家賃も生活保護決定後の後払いにしてもらい、その足で再び役所へ生活保護申請に向かいました。今度は、行政書士の私も一緒に行きました。
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