すべてが変化したが、何も変化していないともいえるーー#MeTooムーブメントから3年、きっかけを生んだ記者が語る
2017年10月5日、ニューヨーク・タイムズのスクープ記事が全米を揺るがした。アカデミー賞受賞作を数多く生み出してきた大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの約30年にわたる女優や女性従業員へのセクハラや性的暴行の数々が白日の下にさらされたのだ。この報道をきっかけに、全世界に#MeTooムーブメントが波及したのは記憶に新しい。あれから3年、世界は変わったのか。ワインスタイン取材をリードした調査報道記者のひとり、ミーガン・トゥーイーに聞いた。(インタビュー・文:冨永真奈美/構成:Yahoo!ニュース 特集編集部)
世界中で文化的なシフトが起こっている
今年3月、ワインスタインに、女性2人への性的暴行などの罪で禁錮23年の実刑が言い渡された。彼は現在収監中である。トゥーイーたちの記事をきっかけに、セクハラの告発によって著名な司会者や議員が次々に辞任するという現象も見られた。世界中で#MeTooムーブメントが巻き起こるなど、セクハラや性的暴行に関する認識や環境は変化を遂げているように見える。 ――この3年で、どのような変化があったのでしょうか。 「企業やビジネスの分野ではセクハラ問題への認識が高まっているものの、それを受けてコーポレート・ガバナンスや人事システムに抜本的な方針転換が起こっているかといえば、そういうことはありません。特にいわゆる低所得者層の女性を取り巻く職場環境には、ほとんど変化が見られない状況です。また、セクハラや性的暴行から被害者を守る法律の整備も停滞しています」
「ただ、より幅広い視点で見れば、確実に大きな変化が起こっています。それはアメリカを含め世界中で爆発的に起こっている文化的なシフトです。まさにダムが決壊したかのように、多くの人がセクハラや性的暴行の問題について語り合っている。このシフトは記事を公開した直後から始まっていました。自身の被害を告白したい人々から、洪水のような勢いでメールや電話が入りましたからね。そうした告白は報道記事だけでなくSNSを通じて一般に公開され議論されている。この動きは今でも続いています。この3年を総合的に見れば、『すべてが変化したが、何も変化していないともいえる』という表現が当てはまりますね」