柴田理恵「人生のしまい方を見せてもらっている」遠距離介護で感じた親との向き合い方
“親のために”と無理をすると共倒れになることも
――日本では“介護は家族ですべき”という考えが強いため、介護をしていないことで罪悪感を感じる人もいますよね。 柴田理恵: 親は自分の息子や娘が幸せなことを望んでいると思います。だから親のためにと無理をしたり、仕事を辞めたりしてしまうと、共倒れになる可能性がある。それはあまりよろしくないことじゃないかと思いますね。 今、母の面倒を実際に見てくれているのは、ケアマネジャーさんやヘルパーさんです。身の回りの世話を親戚がしてくれています。母は学校の先生をしていたのですが近所に住んでいる母の教え子も、いろいろ差し入れてくれたり、雪を片づけてくださる方もいます。私はそういった人たちと連絡をとって、「今の母に、ダメなことがないでしょうか?」とたずねるようにしています。 あるとき「着替えるのが嫌だと言われるので困っています」と言われたことがありました。娘としては「どうして着替えないの!」と叱ってしまいそうになりましたが、まずは母の話をよく聞いてみることにしました。すると「子育てが忙しい親戚のお嫁さんに自分の衣類まで洗濯してもらうのが悪いから」と言うんです。それが理由で母は着替えたくなかったということがわかりました。 認知症や病気が原因で着替えをしたがらないというわけではなくて、お年寄りなりの理由がちゃんとあるんですね。だから「洗濯をしてくれているあのお嫁さん『自分の洗濯の仕方が嫌だから着替えたくないのかしら』って悲しんでいるよ。着替えてあげた方が喜ぶよ」と話したら、「それだったら申し訳ない」と着替えるようになりました。こんな風にちゃんと解きほぐして話すと、うまくいくのだと思います。 もちろん、ケアマネジャーさんやヘルパーさんとのコミュニケーションも大事です。「こういうことで困っているのですが、伝えてくれませんか?」「ここはこうしていきましょう」などと、何でも相談できるくらい仲良くなっていく方がいいと思います。