がん患者からよく聞かれる質問「免疫力を高めるにはどうしたらよいのですか?」
免疫力よりも「いい状態で長生き」が大事
「免疫力を高めるにはどうしたらよいのですか?」というのが、今回の質問ですが、そもそも、「免疫力」というのは、簡単に評価できるものではない、というのが、最初の回答となります。 血液中の白血球数、白血球の成分である好中球やリンパ球の数、免疫細胞の種類やその存在割合など、いろいろな指標がありますが、どれ一つとっても、スーパーシステムのごく一部分を見ているにすぎず、この数値が高ければ、免疫が高いと言えるような、単純な指標はありません。 また、仮に「免疫力」が正確に評価できたとして、それを高めることが究極の目標なのか、というのも、考えていただきたいポイントです。「免疫力」が高いかどうかよりも、「感染症にかからないこと」「がんを抑えられること」「副作用が軽く済むこと」の方が、より重要な指標ですし、目指すべき目標は、「いい状態で長生きできること」です。 何かの治療を選択するとき、その治療が免疫力を高めるかどうかにこだわるよりも、その治療によって、どのような恩恵(プラス面)と不利益(マイナス面)があり、そのバランスがどうなのかを考えることの方が重要です。 免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞を攻撃する免疫細胞を活性化する薬ですので、免疫力の一部を高めていることになりますが、それによって起きる副作用もあります。話題の薬だからと言って、みんなに効くわけではなく、効果が得られているかどうかをきちんと見極める必要があります。プラス面がマイナス面を上回っていると判断できるのであれば、治療を継続し、そうでなければ治療中止や治療変更を考えます。 従来型の抗がん剤治療では、白血球数は減少しますので、一部の免疫力を下げていることになりますが、感染症にかかりやすいというマイナス面があったとしても、それを上回るプラス面があること、すなわち、「いい状態で長生き」につながることが期待できるのであれば、その治療を試してみるのが妥当と言えます。 「免疫力を下げるような治療はすべきでない」というように決めつけてしまうのではなく、プラスとマイナスのバランスをよく考えて、冷静に判断する必要があります。