カマラ・ハリスがパンツスーツを選ぶ理由とは。米大統領候補のパワー・ドレッシング術
今の彼女にとっては一貫性も極めて重要だ。ハリスは自分のことを知ってもらう必要があり、親しみやすさがそれを実現するのに役立つ。同じ外見を何度も繰り返し見ることによって、私たちは彼女に親近感を覚え、理解し、知っているような気持ちになっていくからだ。
とはいえ、ハリスの厳格なシンプルさの下には自己主張も見え隠れする。彼女が好む「アルチュザラ」、「キャロリーナ ヘレラ」、「ドルチェ & ガッバーナ」などのブランドは、間違いなくラグジュアリーであり、ミシェル・オバマが「J.クルー」をホワイトハウスに持ち込んだ後の世界では、エリート主義や庶民感覚の欠如といった批判を受ける可能性があるかもしれない。彼女はまた、アメリカのブランドと同じくらい、ヨーロッパのブランド(「クロエ」、「ヴァレンティノ」、「セリーヌ」)も愛用している。「クリストファー・ジョン・ロジャース(Christopher John Rogers)」や「セルジオ・ハドソン(Sergio Hudson)」といった黒人やマイノリティーのデザイナー(ミシェル・オバマに言わせれば、「たまたま黒人だった」才能あるデザイナーたち)のブランドを受け入れながら、それだけに限定されることはない。その様子はまるで、「私はこれらすべての要素を持っていますが、それだけではありません」というメッセージのようにも思えるし、単純に「私はこれが好き」とも受け取れる。
彼女のやり方はかなり巧みだ。政治の世界では女性のファッションの選択は常に緊張を伴う。テリーザ・メイ英首相がレザーのパンツをはいていたことで非難されたことを覚えているだろうか。あるいは、2021年のハートリプール補欠選挙で労働党が敗北したときに、副党首のアンジェラ・レイナーの厚底ブーツとヒョウ柄のパンツが原因だと非難されたことを。外見を気にしすぎると軽薄だと言われ、気にしなさすぎると怠惰だと否定される。本当にうんざりすることだろう。