「あえて俺は今のお前に声をかけない」原晋監督と青学大“11年で箱根駅伝8回優勝”…強すぎる背景「ウチは前半遅れます」宣言で4連覇したことも
キャッチーなフレーズだけでない“声かけ”
<名言2> 自発的に物事を考えられるようにならないとこれから先の成長はないから。だからあえて俺は今のお前に声をかけない。 (原晋/Number968・969号 2018年12月20日発売) ◇解説◇ 原監督の名将たるゆえんは、トレーニングやスカウティングだけでなく、選手への働きかけにもある。 2015年と2017年の箱根駅伝で、青山学院大学のアンカーとして優勝テープを切った安藤悠哉に対して、入部直後にかけた言葉である。 チームを率いる原監督はキャッチーなフレーズでメディアを賑わせることが多いが、部員に対してのアプローチもきめ細かいことで知られる。「自分で考えて練習をやりなさい」とのアドバイスを受けた安藤らは気づけば「すごい量を走り込んでいた」のだという。 <名言3> 去年は「ワクワク大作戦」ということで、勝って本当にワクワクしたんですけど。今年はドキドキでした。 (原晋/Number893号 2016年1月7日発売) ◇解説◇ 2016年の箱根駅伝は青山学院大学の2連覇で終わった。しかも1区から10区までトップを譲らない、1977年の日体大以来39年ぶりの完全優勝だった。結果だけ聞けば会心のレースだったように思えるが――じつは本番間際になって選手の体調不良が重なるなど、想定外のアクシデントに見舞われており、指揮官の心中は穏やかではなかったようだ。 「やはり追われる立場のプレッシャーがありましたね。往路が終わるまでは特にそうでした」
「ウチは前半遅れます」と語った日
<名言4> ウチは前半遅れます。 (原晋/Number942号 2017年12月20日発売) ◇解説◇ 「ワクワク大作戦」「あいたいね大作戦」など様々なキーフレーズを口にする原監督だが、戦略面でアッと言わせる発言をしたのは、2018年の箱根駅伝に向けてのことだ。この年は「ハーモニー大作戦」と称しつつ……それ以上に注目されたのは“前半で遅れる”というあえての宣言だった。 「複雑系ですな」 大会前、原監督はこのように口にしている。往路優勝を狙い、2区までに先頭に立とうと考えている学校が例年以上に多いことで、とにかく「前掛かり」の布陣が予想されるという。しかし、原監督は往路では力を温存する意向を示した。 「ウチが1区でくらいついていけば、2区でも途中まで並走するなりして、その差は1分半で抑えられます」 果たして結果は、往路優勝こそ東洋大学に譲ったが、復路では6区から10区まで1位を明け渡すことなく、4年連続の総合優勝を勝ち取ったのだった。 そして同校2度目の連覇を目指す2025年の箱根駅伝でも――原監督は泰然自若としていた。1区は区間10位の少々スロースタートとなったが、2区・黒田朝日、4区・太田蒼生、5区・若林宏樹の快走で往路優勝を果たし、復路も山下りの6区・野村昭夢が史上初の56分台(56分47秒)をマークする激走を見せた。 「おのずと復路についてはピクニックランができるのではないかなと思っています」 12日の壮行会では“若林に2分以上の差がついた状態”という前提で、指揮官はこのように語っていたそうだ。しかしその後も8区・塩出翔太、10区・小河原陽琉が区間賞をマーク。山上りと山下りの特殊区間はもちろんのこと、各区間での多士済々ぶり。ピクニックランどころか――10時間41分19秒と2年連続での総合記録更新をマークする総合力の高さを見せつけた。〈箱根駅伝「青山学院大連覇」特集:つづく〉
(「スポーツ名言セレクション」NumberWeb編集部 = 文)
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