山本昌が語る、福留日米通算2000安打の理由 「彼は納得していない」
「野球脳というのか、センスが抜群で、あらゆる状況判断ができるのも孝介の特徴。守備やバッティングだけでなく、自らのチームの状況や、相手の事情、ペナントの行方まで、すべてを読んで行動を選択するベースボールIQの高さがある」 山本昌氏は、そのベースボールIQの高さにも目を見張る。勝負強さの理由だろう。2006年には、アテネ五輪に続き、WBCメンバーにも選ばれた。予選リーグでは3番で起用されていたが、結果が出ずに準決勝の韓国戦ではスタメンから外されたが、7回に代打で出場し、金炳賢から先制2ランを放ち、王ジャパンは決勝進出を果たす。決勝戦でも、また代打で2点タイムリーを放つなど大舞台での勝負強さを発揮した。 また福留の特徴は、アスリートとして、常に体調に気づかい、怪我に強い部分だ。メジャーの5年間のプレー後、阪神に凱旋帰国した初年度は左膝を痛め、2年前は巨人戦で西岡と激突して相当の怪我を負ったが、一切、表に出さずに、シーズンで104試合に出場を果たしている。 それらを踏まえた上で山本昌氏は、福留の次なる夢への期待を口にした。 「2000本を打って当然の選手。心からおめでとうと言いたいが、彼の性格からすれば、まったく納得などしていないだろう。きっと日本だけで2000本を打つと考えていると思う。残り448本。来年からは40代に乗るが、私は十分に打つ力があると思う。おそらく体のどこかに痛いところがあったり、コンディションを保つために人に言えないような苦労があるはずだが、決して表に出さない。それが、孝介やイチローらの超一流選手の流儀なのだろう。彼には、年齢からくる限界を乗り越えることのできる『俺には野球しかないんだ』という強い思いと、ずっと追い求め続けている技術がある」 確かに福留は、打撃スタイルのマイナーチェンジを続けながら究極の打撃を追い求めている。右足をスクエアからオープンに変えて構え始めたのも昨年からだ。 NPB2000安打までは、残り498本。おそらく今季も、このペースならば100本以上の安打を打つと考えられるため、故障などせずコンディションを維持することができれば、後4年もあれば可能な数字だろう。そのとき福留は、43歳。日米通算2000安打を達成した日本人は、イチロー、松井秀喜、松井稼頭央、中村紀洋、井口資仁に次ぎ6人目となるが、このうちNPB2000安打をクリアしているのは、松井稼、中村の2人だけになる。 会見でもNPB2000安打についての質問が飛んだが、福留は「そこはもう、あまり見ずに目の前のことを一つ、一つやっていけたらいい。個人的な数字は、もう追いかけることもない。あとはもうこのチームが勝つということが目標」と語った。山本昌氏が言うように、おそらく福留は、まだ納得などしていない。 その不満足な理由の一番は、優勝という名の美酒ではないだろうか。求道者・福留の野球人生の、まだまだそのゴールは見えない。