人間関係のトラブルを「うまく乗り切れる人」と「火に油を注ぐ人」の違い
「小さなごめんなさい」がトラブルを未然に防ぐ
ちなみに、「大きなごめんなさい」が必要になりそうな場面でも、「小さなごめんなさい」は重要な役割を果たします。 かつて私が働いていたある企業では、お客様からクレームの電話を受けたときのガイドラインがあって、次のように対応していました。 ■会社として、簡単に過失を認めたり、補償を約束したりしてはいけない ■ただ、「お客様を不快にさせたこと」についてはお詫びをする そう、謝るのは「お客様を不快にさせたこと」に対してだけ。クレームの内容や経緯がどうだったにせよ、お客様を不快にさせたことは間違いないので、そこについては「不快にさせて、すみません(ごめんなさい)」と謝罪するのです。 実際、最初に「小さなごめんなさい」をお伝えすることで、ほとんどのお客様の怒りはおさまっていました。人とトラブルになりそうになったら、すかさず「小さなごめんなさい」を伝えていくことで「大きなごめんなさい」を未然に防ぐことができるわけです。 間違っても「でもね、お客様」「これはルールですから」といった対応はNG。相手のことをただケアする「小さなごめんなさい」ですむことが、場合によっては訴訟などの「特大のごめんなさい」につながることがあります。 「ごめんなさい」を「公式に謝罪する」という大きな意味でとらえると気が重くなりますが、「あっ、私、なんかしちゃった?」と目の前の相手のことをただケアする言葉として考えられると、少しイメージが変わりませんか。
謝るまでの時間を、できるだけ短くする
「相手を不快にさせたかも」と思ったら、すかさず「小さなごめんなさい」を伝えていくことを提案している私も、謝ることの難しさは重々承知しています。 特に難しいのが「すかさず」という部分です。「ごめんなさい」を伝えるときの最重要ポイントは、「気づいて→謝る」までの時間を、できるだけ短くすること。この時間が短ければ短いほど効果的です。 1年後よりも1カ月後、1カ月後よりも1週間後、1週間後よりも1日後、1日後よりも1時間後、1時間後よりも今この瞬間です。時間が経つほど、「ごめんなさい」のハードルは、どんどん高くなります。 「ごめんなさい」は、駅のホームにある「非常停止ボタン」のようなもの。「危ない!」と思った瞬間に、すぐに押すことが大切なのですが、これが本当に難しいのです。 ボタンを押して、すぐに立ちどまれたら被害は最小限ですむのに、反射的に相手に言い返してしまって、人間関係にひびを入れてしまいます。
林健太郎(合同会社ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ)