ドイツから名古屋の有松鳴海絞りをリブランディング、伝統工芸アパレルを刷新した風通しの良さ
その両国を行き来するなかで、村瀬弘行率いる5代目スズサンは、有松と世界各地を繋ぐ道を少しずつ染めてきた。
「以前は『ススザンってどんな会社なんですか?』と問われた時に『有松の絞り屋さん』と答えていましたが、今では『文化の架け橋をしている会社』と考えています。東西、人、そして過去と未来を繋ぐ架け橋です」
世界を股にかける村瀬さん自身は、グローバルという考え方は好まないという。 「ローカルとローカルを繋いでいるというのが、スズサンのビジネスの根底です。2008年のブランド立ち上げから15年、有松から他地域にプロダクトを届けてきました。 これからの15年は、その地域の人たちが有松に来て、プロダクトを作った人たちと触れ合える仕組みを作りたい。有松という小さなローカルと世界を行き交う人の循環を目指しています」 江戸時代の絵本作家で俳人の秋里籬島が著した『東海道名所図会』は、当時の有松の様子をこう記している。 「名産有松絞。細き木綿を風流に絞りて紅藍に染めて商うなり。(省略)旅行の人および諸国に商う」 かつて日本各地からの旅人の行き来で栄えた有松が、今は世界各国からの往来と商いを目指す。